人生初の映画館貸し切り状態ならず。 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 先日、宿直の勤務明けを利用して映画館に出かけた。職場から直行。10時15分から始まるその日最初の上映だ。
 開始5分前くらいに目的の上映館に入り、そこで途惑った。
 え、嘘?……
 誰もいない……と。
 そう、既に本編前の予告編の紹介がスクリーンに流れているのに館内に客が一人もいない。若い頃と違い、最近は映画館からも足が遠ざかっている。切符の購入の仕方とかも含めて、最近の映画館のスタイルにも、すっかり不慣れになっていたので、これ本当に入っていいの?……と躊躇を覚えたのだ。
 平日の最初の上映。しかも観に来たのが封切り後そこそこ日が経っている作品。それで客が入っていないのだと直ぐ察したが、しかし僕の他に客が一人もいない状態は流石に驚く。
 それでもその段階では、後からすぐ何人も客が入ってくるだろう……と高を括っていた。しかし自分の席に腰掛けて、その後しばらく経っても他の客が入ってこない。
 え、もしかしてこれって、人生初の映画館貸し切り状態を堪能できる?……と俄かに期待が高まった。
 高校生の頃、授業サボって出かけた映画館で客が僕以外一人だけという体験はしたことがある。惜しくもその時も貸し切りとはならず。それが映画館で体験した客が僕以外最小記録だ。これを塗り替えるには他の客ゼロしかない。
 およそ三十五年の時を経て、まさか今になって記録更新か?……
 そもそも客が僕以外に一人だけという高校生の頃の体験は、場末の三番館の出来事。映画自体も好きものしか興味を惹かれないC級ホラー映画だったので、それもありなん。しかし今回は一番館。いくら封切り後そこそこ日が経っているとはいえ評判の良さを聞きつけて観にきた作品だ。それを、まさか貸し切り状態で観られるとは贅沢この上ないではないか……。
 結果、上映が始まったまさにそのタイミングで、女性客が一人入ってきてしまい、人生初の贅沢鑑賞は成らず……となってしまった。
 うーん、残念!
 思わず小さく舌打ちを鳴らしてしまった。
 まぁ最も、客がもしも僕一人だとしても、パンツを下ろして自慰行為に耽りながら観られるでもなく(そもそも自慰行為に耽りながら観る作品でもない)、客が僕だけだから一丁やったるか!……と上映中に奇声を発する度胸もない。客が僕だけだろうが他にいようが、何がどうってこともないのは確かだ。
 よくよく考えればね。
 しかし若干その時は期待が高まっていたのも確かだ。
 貸し切り鑑賞。これ話のネタにもなるかな……と。
 結局、上映開始ぴったしのタイミングで入ってきた客の後にも一人、更にもう一人、おまけに5分以上経ってから更にもう一人、すべて単独客がいずれも間隔を少し置きながら入ってきて、何なんだお前らは? 平日のこんな時間に映画を観に来て、しかも途中から入ってきて、どいつもこいつもいい身分だよな!……と毒づきたい気分になってしまった。
 しかし映画そのものは良かったので、まぁ気を取り直してよしとする。
 ちなみに観たのは『鬼太郎 ゲゲゲの謎』。女性に評判が良いという前情報も納得の内容。実際その時の僕以外の四人も全員これ女性だった。目玉おやじが女心くすぐる実に男前に描かれているのだ(見た目も心構えも両方ともね)。
 それが今年2024年最初に映画館を訪れて観た映画。コロナ禍に入って以降タイミングを逸してしまい2020年から2022年まで映画館から足が遠ざかっていた。しかし去年は二本の作品を映画館で久しぶりに観ることができた。
 ちなみに去年観た二本は『シン・仮面ライダー』『ゴジラ−1.0』。
 映画館での鑑賞もその値段を考えると、既に貧乏人には贅沢なアトラクション。そう度々は利用できない。しかし又こんな風に足が向かうようになったのなら、今年も願わくは四、五回くらいは映画館を利用したいと思っている。
 まさか五十路も過ぎた今になって鬼太郎アニメを映画館に一人観に来るとは想像だにしなかった。しかし予想外のこういう鑑賞も又一興。
 今年は他に映画館で、いや、特に映画館にこだわらずとも、一体どんな映画が観られるだろう。
 又それも楽しみだ。