水の故郷。 安眠に揺蕩っていた。 夢にも満たない情報の粒が 時の代わりに流れてゆく やわらかい水の中で。 目覚めたくはなかった。 苦痛を伴う思念を得るより 存在はアメーバー程度で、 温かみに同化していたかった。 今なお恋しいんだ。 感覚だけで宇宙を享受していた あの深い水の故郷が。 既に耐え難い粘着の自我。 この惨めさを捨て今は還りたい 懐しいあの慈愛の底へ。