今期の朝ドラも残すところあと二週間となり。 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 今期の朝ドラも残すところあと二週間。いよいよフィナーレが近づいている。脚本を一人に任せず三人が分担。リレー形式という形で物語が繋がれていったので、脚本家が変わるたびにテイストが大きく変わってしまうのは些か苦になった。しかし全体的には嫌味のない、寛いで観ていられる、良い意味で朝ドラらしい朝ドラ。その爽やかさを概ね楽しませてもらった。前回の朝ドラがあまりに酷く、観ていて不快感の方が先立ち、付き合うのが苦行の域に達したので、途中離脱。それ故、今期は最後まで付き合えたらそれでよしとするか……と著しくハードル低く見始めたら、それなりに楽しめる内容だったので嬉しかった。
 高が朝ドラ。しかし毎日十五分の世界が、ある程度楽しく観られれば、半年に渡る長丁場もあり、すっかり親しみを覚える世界となる。登場人物にも愛着が湧く。今期の朝ドラは残すところあと二週間となり、もう終わるのか……と一抹の寂しさが湧く。親しみを覚えた確かな実感だ。何と言っても今期はヒロインの舞ちゃんが良かった。親爺心ほだすほんわかとした愛らしさがあり、舞ちゃんが舞ちゃんらしく、生き生き日常を過ごしている、それを見ているだけで日々の癒しとなった。巡り巡って舞ちゃんの運命の人となった貴司くんの、今どきの青年らしい中性的な奥ゆかしさも良かった。文学青年で、自己表現の試行錯誤を経て、やがて歌人として世に立つ設定も、十代の頃から歌作を続けている身には親しみが湧いた。貴司くんの「まいちゃん」と呼ぶやわらかい思いやりを感じさせるイントネーションも良かった。貴司くんが「まいちゃん」と言うたびに、妙に僕の胸もキュンとなったものだ。貴司くんに幻想を抱く夢見る短歌女子、秋月さんの一途な切なさも忘れ難い。富小路禎子の「ほのぼのと愛もつ時に驚きて別れきつ何も絆となるな」という狂おしい絶唱をまさに体現しているかのような存在だった。柏木くんは知らん。何だったんだあいつは? 今となってはどうでもいい。
 さて、そんな舞いあがれがラスト、どんな落とし所に持ってゆくか、今は気になるところ。万博に披露するために東大阪の町工場が結集して作った人力飛行機を、ラスト、舞ちゃんがパイロットとなって飛ばす。
「又ここに戻ってこられた!」
 飛行機を操縦しながら嬉しそうに青空を眺める舞ちゃんの幸せいっぱいの姿を映し出してフィナーレ。漠然とそんな落とし所を予想している。そこで岩倉のネジが使われたら、亡きお父ちゃんの、「いつか岩倉のネジを飛行機に使いたい」という夢も一応は叶えられる。普通に舞ちゃんのパイロットとしての成長がその後は描かれるかと思いきや、予想外の方向へ舵が切られて、何だったんだあの大映ドラマ風の、無駄に吉川晃司が存在感を放っていた時期は?……と大いに途惑わされた航空学校編の落とし前も付けられる。当たらずも遠からずじゃなかろうか。
 恐らくコロナ禍は端折るか、多少の匂わせ程度でかなり省略する気がする。もしもお父ちゃんの夢を叶えるために航空業界に参入していたら、コロナ禍の直撃を受けて、またしても岩倉は大打撃を受けるのじゃなかろうかと懸念していたが、それはお母ちゃんの絶妙な判断で回避されたので、コロナ禍はあまり突っ込まない方向性だな……と。コロナ禍は敢えて避けて、少し前の時代で物語を紡ぎ、ラストで匂わせ程度でコロナ禍を持ってくるのは最近のドラマでよく見かける手法だ。舞いあがれ!もその手法を踏襲して、2019年から一気に2025年に飛びそうな気がする。
 それだけコロナ禍のこの三年はドラマにし難いのだ。どうしてもマスクが避けられず、それがネックとなってね。
 これだけ爽やかな明るさへ向かっている本作。わざわざ最後の最後で、辛気臭いコロナ禍に真摯に向き合う必要もない。匂わせ程度で良いと思う。
 航空学校編から、いきなり町工場編へ大きく舵が切られた時は驚いたが、全体的には上手くまとまった、バランスの取れた構成となって終わりそうだ。