勇おじさんは馬鹿だけれど人情味には厚いキャラクターだった筈。るいは嫡男の娘として、大判焼きの店の開店資金くらい、雉真家に堂々と頼みに行ってもよかったし、勇おじさんも快くお金を出す。そういうエピソード一つ組み込まれていたら、まだしも説得力が生じたろうけれど、資金にまつわるエピソード全部すっこ抜いて、いきなり開店は流石にリアリティ無さすぎる。後、幼少期にあんこ作る母の傍らにずっと甘えて寄り添っていたからって、同じ味が簡単に再現できるとも思えないし、店を開く前に、少しは他所で修行もさせろよ。
今期の朝ドラは確かに面白い。エモーションも高く、ドラマチックに盛り上がる場面もてんこ盛り。しかし情緒に頼り過ぎて、要所々々で展開かなり雑になるのは些かか苦になる。『半分、青い。』並みにツッコミどころも多く、藤本有紀が脚本を担当している割には、印象が大味だ。昭和の大映ドラマとか、一昔前の韓流ドラマとも似る、かなり臭みある展開も、観ようによっては繰り返されている。
しかしその臭みに関しては、あくまでも後でよくよく考えたらで、観てる最中はあまりそれを感じさせない処が、まぁ贔屓目もあるかもしれないが、絶妙のセンスだ。母に捨てられた少女とガード下で闇を見つめながら震えていた浮浪児。そんな二人が出逢い、手と手を取り合い光を目指すボーイ・ミーツ・ガール。
うん、やっぱり素敵な物語だ。
後、ベリーちゃんがジョーとるいの友人として、今後も物語の舞台に出続けそうなのは、すっかりベリーちゃんファンとなっている僕としては嬉しい。まぁ、これに関しては、ある程度予想は付いていたけれどね。だって二人の若い時期に一時的に繋がりがあった友人ってだけなら、何も市川実日子でなく、普通に二十歳くらいの若手を起用すればいいのだから。そういう意味ではジョーもるいも、ヒロインが三代目に切り替わった後も、安子のように物語の舞台から完全に消え去ることはないのかな? 安子編のラストはあまりに痛かったから、せめてジョーとるいには幸せポジションで、三代目ヒロインの活躍を見守ってほしい気がする。
しかし何といっても脚本が藤本有紀だから、こればっかりはなぁ……
ジョーのライバルだったトニーも、藤本有紀のことだから破滅に向かわせそうな予感は抱いている。最初はトランペット奏者として成功。その活躍に、祝いたいような妬ましいような複雑な思いをジョーに抱かせる。しかしそのうちプレイに行き詰まり、酒に溺れて駄目になってゆく。藤本有紀ならトニーをそういう運命に落とし込む気がする。今の時点で既に、酒の飲み方が若干荒い印象は受けるし、ジョーを下戸にしたのも、トニーと対象づける意味合いもあると予想。
当たるか外れるか、今後はあまり登場機会がなさそうなトニーの運命も、今は気になるポイントの一つだ。