京都に移り住んだジョーとるい。 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 そもそも京都に行く決意をするまでの顛末が全部端折られていたのも、「えっ?」と些か肩すかしを喰らった。更にその後、切り詰めれば二人で何とか3ヶ月暮らせる程度の貯金で京都へ来て、いきなり大判焼きの店を個人で開業って、流石にこれは世の中舐めすぎだろう。開店資金どうやって捻出したか、この辺の説明はせめて欲しかったかな。ジョーとの暮らしのために、雉真家に援助を頼みにゆくるいのエピソードくらいは加えても良かった気がする。そもそもるいが家を出る際に、幾ら本人が拒んだとしても、半ば強引にでも、ある程度まとまったお金を渡すのが名家の筋とも感じたしね。勇おじさん、るいから、「アルバイトで貯めたお金があるから」って言われて、「そうか……」と、あっさり援助の申し出を引っ込めたの、あれはないわって思ったぞ。世間体とかも普通に考えて、嫡男の娘が家を出る際に当面の生活に困らないお金くらいは渡すし、その後の暮らしぶりも気にかけるわな。もしも生活に困窮して、るいが夜の女にでもなったら、それこそ雉真家の名に傷がつくじゃん。ここが勇おじさんは苦労知らずで野球バカの二代目ボン。苦労人の千吉お父さんのような配慮が行き届かないのかもしれないが、そこは雉真家の人間として、家を出た後も、ある程度るいのその後の暮らしぶりも気にかけてやれよ。竹村クリーニング店にも、姪が世話になっている御礼がてら挨拶に伺うとか、名家なら名家の振る舞いがありそうなものだ。るいが家を出てから全く気にかけていないというか、あっさり縁が切れちゃった感じ、これ、あまりに薄情過ぎないか?
 勇おじさんは馬鹿だけれど人情味には厚いキャラクターだった筈。るいは嫡男の娘として、大判焼きの店の開店資金くらい、雉真家に堂々と頼みに行ってもよかったし、勇おじさんも快くお金を出す。そういうエピソード一つ組み込まれていたら、まだしも説得力が生じたろうけれど、資金にまつわるエピソード全部すっこ抜いて、いきなり開店は流石にリアリティ無さすぎる。後、幼少期にあんこ作る母の傍らにずっと甘えて寄り添っていたからって、同じ味が簡単に再現できるとも思えないし、店を開く前に、少しは他所で修行もさせろよ。
 今期の朝ドラは確かに面白い。エモーションも高く、ドラマチックに盛り上がる場面もてんこ盛り。しかし情緒に頼り過ぎて、要所々々で展開かなり雑になるのは些かか苦になる。『半分、青い。』並みにツッコミどころも多く、藤本有紀が脚本を担当している割には、印象が大味だ。昭和の大映ドラマとか、一昔前の韓流ドラマとも似る、かなり臭みある展開も、観ようによっては繰り返されている。
 しかしその臭みに関しては、あくまでも後でよくよく考えたらで、観てる最中はあまりそれを感じさせない処が、まぁ贔屓目もあるかもしれないが、絶妙のセンスだ。母に捨てられた少女とガード下で闇を見つめながら震えていた浮浪児。そんな二人が出逢い、手と手を取り合い光を目指すボーイ・ミーツ・ガール。
 うん、やっぱり素敵な物語だ。
 後、ベリーちゃんがジョーとるいの友人として、今後も物語の舞台に出続けそうなのは、すっかりベリーちゃんファンとなっている僕としては嬉しい。まぁ、これに関しては、ある程度予想は付いていたけれどね。だって二人の若い時期に一時的に繋がりがあった友人ってだけなら、何も市川実日子でなく、普通に二十歳くらいの若手を起用すればいいのだから。そういう意味ではジョーもるいも、ヒロインが三代目に切り替わった後も、安子のように物語の舞台から完全に消え去ることはないのかな? 安子編のラストはあまりに痛かったから、せめてジョーとるいには幸せポジションで、三代目ヒロインの活躍を見守ってほしい気がする。
 しかし何といっても脚本が藤本有紀だから、こればっかりはなぁ……
 ジョーのライバルだったトニーも、藤本有紀のことだから破滅に向かわせそうな予感は抱いている。最初はトランペット奏者として成功。その活躍に、祝いたいような妬ましいような複雑な思いをジョーに抱かせる。しかしそのうちプレイに行き詰まり、酒に溺れて駄目になってゆく。藤本有紀ならトニーをそういう運命に落とし込む気がする。今の時点で既に、酒の飲み方が若干荒い印象は受けるし、ジョーを下戸にしたのも、トニーと対象づける意味合いもあると予想。
 当たるか外れるか、今後はあまり登場機会がなさそうなトニーの運命も、今は気になるポイントの一つだ。