NHK『映像の世紀第11集』 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 とても有意義な時間を提供してもらえた本シリーズも、今回この第11集で最終回。1996年に発表された本シリーズ、以前から評判を耳目する機会は多かったが、僕は今回これが初体験。成程その評判の高さも頷ける、映像もナレーションも当時の発言を声優に語らせる手法も、全てが高いレベルで有機的に結びつき、統一感もある傑作シリーズに感じた。四半世紀前のドキュメンタリー作品なのに古びた印象は全く覚えない。息を呑む地獄絵図の緊迫感も含めて、見事な映像チョイス。そして鮮やかな構成手腕だ。何より繰り返し観たくなる貴重な歴史的映像のオンパレード。悲惨でもあり豊かでもある映像が目一杯詰まった流石のNHK水準だ。
 最終回の今回はテーマを日本に集約。江戸の幕末から明治維新、そこから紆余曲折を経て太平洋戦争の大惨敗までの日本を紹介。世界各国の配信映像を中心に、そのテーマが纏められている。欧米列強の典型的フジヤマゲイシャ幻想も含めて、これ又興味深い映像ばかり堪能できた。明治維新から急速なスピードでの近代化。そして日清戦争、日露戦争を経て、瞬くうちにアジアの君主的国家に上り詰め、欧米列強からも一目置かれる国際社会の重要ポジションを得るまでに至った日本の軌跡が、その奇跡的な流れが、実によく理解できた。この辺の時期に判断を誤らず一旦引けば、内需拡大の方へシフトを切り替えれば、或いは今も戦前の豊かさを継承して、今とは全く違う歴史を日本は刻んで来たかもしれない。それを思えば当時の日本の上層部の愚かさ、状況把握の乏しい無能さが、本当に情けなく、国を同じくするものとして忸怩たる思いも湧く。その後、瞬くうちに国際社会から孤立してゆき、最悪の方向へ舵を切った過程を紹介されるにつれ、その思いが苦々しく募るばかりだった。
 という次第で最終回の今回も、観ていてやり切れなさが募ったが、勿論それは根底に充実感が据えられたやり切れなさだ。貴重な映像と共に学びも大かかった本シリーズ、永久保存版として残しておきたくなる、録画を消すのが惜しくなるクオリティだった。