美由紀という名で十七歳で。 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 美由紀という名で十七歳(じゅうしち)で、
 すらり背の高い
 聡明な印象の君だった。
 面影も今なお素敵な君だった。

 だけど君はもう忘れたろう、
 放課後の放送室で
 二人きりになったあの束の間を。
 窓辺で感じたあの春の日を。

 例え君が忘れ果てても
 僕はしつこく覚えているさ、
 男って不器用ね……って
 耳元で囁きかけた君の華やいだ笑顔を。

 君の囁きに狼狽えたあの瞬間に感じた風も、
 君の髪がその時少し揺れたことも、
 茶目っ気たっぷりの君の眼差しも、
 何度も思い出しては反芻して来た。

 幸せを約束された君が
 覚えている筈もない些細な出来事。
 放送室に流れてた
 君のチョイスのカルチャークラブも忘れたろう。

 あの放送室で聴いたボーイ・ジョージの歌声は
 心浮き立つ明るさを感じたが、
 本当は孤独が定めの哀しみが宿ると
 君に忘れ去られた後ようやく気づいた。

 美由紀という名で十七歳(じゅうしち)で、
 君はクールでイカしてた。
 声の質感も囁きも
 畜生! 今なお耳にも素敵な君だった。