以前から漠然と感じていたのだけれど、一年を通して女性が一番美しく感じられる時期って、今頃の季節のような気がする。
つまり秋。
単に僕が秋のシックなファッションに身を包んだ女性に惹かれるという、要は好みとか趣味の問題かと思っていたけれど、実際に秋の女性に魅力を感じる男って結構多いらしく、その辺の真相を確か去年の今頃の『ホンマでっかテレビ』で、脳科学とか心理学の根拠に基づいて考察していたと思う。他事をしながらの『ながら見』だったので、正直あまり覚えていないのだけれど、簡単に要約すれば、「秋は一年を通して精神が一番安定し落ち着く季節なので、その安定と落ち着きがフェロモンに結びつく……」という結論だったと記憶している。
しかしこれって女性だけではなく男も当然そうで、秋の心の穏やかさで眺めるから余計に異性が魅力的に見える……という側面もあると思う。少なくとも僕がこの時期の女性が美しく見える理由の一つに、そういう一面は確実に働いていると思う。
一年を通して一番好きな時期を問われたら、迷う事なく、「今の時期」と答える。9月半ばの今の時期から11月終り頃に掛けてが一番好きだ。実際かなりメンタルが弱く、すぐに気鬱に襲われる僕が、秋のこの時期に関してはそれほど情緒不安定になる事なく、穏やかな精神状態で毎年過ごせているような気がする。
今年は5月初旬から8月半ば頃に掛けて、精神状態かなり悪い日々が続いていて、眠りに陥る間際や目覚め時の、いわゆる半眠半醒状態で、何度も自分の手首を切り裂くイメージに捕らわれて、このまま死に呑み込まれてしまうのではなかろうか……という不安と気鬱が延々続いていたのだけれど、何とか鬱の峠は越えたみたいだ。そう、ここ数週間ばかり比較的安定した精神状態で毎日を過ごせているのだ。この穏やかな心がいつまで続くか我が事ながら知れたものではないけれど、願わくは、この秋の季節ばかりは、このまま穏やかな安定した精神状態で過ごさせて欲しいと思う。今更もう女性が美しく見えるとか、そんな事はどうでもいいから、お願いだから世間よ、僕の脆い心を、これ以上もう怒りと憎しみで膨れ上がらせようとしないでくれ。この継ぎ接ぎだらけの心を、また内側から引き裂こうとしないでくれ。
願わくは性根の腐り果てたあいつらから遠く離れた場所で、出来るだけ個人的な時間を過ごしていたい。今年の秋は若い頃から繰り返し何度も読んで来た愛書の再読に時間を費やして過ごしたい。それが、ささやかな、でも切実な僕の今の願いだ。
そう、今はもう、今の現実、今の職場からは、閉ざせる限りは出来るだけ心を閉ざして、夜長の孤独を満たされたものにしたい……と、それのみを願っている。