その時点で勢いに陰りは見え始めてはいたものの、まだ続いていたスプラッターホラーブームに完全に終止符を打った事件がある、M君こと宮崎勤のあの事件。…そう、当時の社会を震撼させた連続幼女殺害事件だ。
今では一つの生き方のスタイルとしてすっかり市民権を得た感もあるオタクという言葉がちょうど使われ始めたのもこの頃で、M君の事件をきっかけに一時期、オタク差別の風潮が世間でヒステリックに吹き荒れたと記憶している。私なども、どちらかといえば家に引きこもりがちの少年だったので、M君の人となりと自分の人間性を照らし合わせてみて、似てるじゃん!…と狼狽したものだ。
だけど報道で紹介されたビデオに囲まれたM君の部屋、ちょっと憧れもしたけれどね。
で、あれから四半世紀の歳月が流れて、既にM君もこの世にいない。そして私はと言えば、極めればきっと一つの華とも成り得ていたであろうオタク道を極めることもままならず、かといって現実的な生き方を心がけてリアル社会で幸福を手に入れたわけでもなく、中途半端なオタク者として、薄闇みたいな漠然とした不幸に絶えず付き纏われているような気分と共にだらだら生きながらえて来たに過ぎない。
どの世界も極めるのは困難だよねM君よ。