都市生活者の夜 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 この曲が収録されているアルバム『ニセ予言者ども』が発売された当時、rockin'onのレビュー欄で渋谷陽一さんが、「この曲を聴くと、まるで自分が許されたような気分になる」と記していたのが妙に記憶に残っている。
 江戸アケミの切実な祈りが楽曲の隅々にまで宿るJAGATARAの最高傑作『都市生活者の夜』。~心身を蝕むほどに過剰に溢れる思いを上手く整理できぬまま、それでも懸命に伝えようと足掻く一人の男の悲壮な姿が垣間見える怒涛のファンク、『少年少女』『みちくさ』『ゴーグル、それをしろ』…そのリズムを、ビートを、そして稚拙ながらも思いの丈が詰まる言葉を、息詰まる思いで受け止めた直後に流れるこのアルバム最終曲は圧倒的な開放感と共に、確かに、優しく胸に染み込んでくる。

 今は午前四時少し前
 今は午前四時少し前
 朝焼けを待ちわびながら
 終わりのないダンスは続く

 この曲に救われた幾つもの夜を繰り返しながら既に四半世紀以上の歳月が流れた。とっくに江戸アケミの享年を年齢で追い越してしまい、後どれだけの夜が私に残されているかもわからぬが、私も又、この思うに任せぬ厄介な肉体から解放されて光りに包まれるその日まで、不様なのは承知で俺なりのダンスを続けてゆこう。
 私も又、終わりなき日常の中で終わりのないダンスを続けてゆくのだ。

 (江戸アケミの命日に)。