花の咲かない植物。 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 成す術もなく運命に弄ばれて、夢見た事も、願いも、何一つ叶わず、何一つ成就せず、報われぬ生を四十数年生きてきて、昨夜、貴女に愛される夢を見た。それはそれは幸せな夢を見た。残念ながら僕自身の姿で愛されていたわけではなく、その夢の中で、僕は貴女の室内で育てられる観葉植物として現れたのだけれど、それでも貴女に大切に育てられて、貴女に優しく語りかけられて、貴女に愛されて、僕はとてもとても幸せだった。
 花の咲かない植物というのが、なんだか僕らしいよね。
 願わくば貴女に愛でられる植物のまま、ずっと貴女の温かい部屋の中で安心していたかったけれど、目覚めちまったのなら仕方がない。次に見る夢の中では貴女の子供として登場したいな。どうせなら貴女の膣の中から産み落とされる所から夢が始まればいい。この世に生を受けた事を母親の貴女に心から喜ばれて、貴女に大切に育てられて、貴女の立派な教育を受けて、つまり貴女の母性愛を一身に受けて成長できたならば、いまよりまともな存在になれていたかもしれない。世の中に自分の居場所もしっかり獲得できていて、貴女の自慢の息子として、社会で思う存分その才能を開花できていたかもしれない。
 愛する母よ、立派に成長した僕は貴女に親孝行したかった。
 そう、僕にはもう、夢の中にしか逃げ場所はないから、いつか見る夢の中で、そういう人生をもう一度やり直してみたい。