私は障害者の施設で働いているのですが、支援を行っているうえで忘れてはならないのは、「管理」と「支援」、「管理」と「教育」は違うということです。
「出来ないこと」が悪いのではない、「できるように本人を変えるのではなく、できるように環境を変える」のが大事なのです。
そこをはき違えて利用者さんを怒るスタッフや上司もいて、利用者さんの自己肯定感を下げてしまっている、ストレス過多にしてしまっていることがあります。
これは、学校や家庭、会社でも同じだと思います。
とあるセミナーで聞いた話です。
一人のとても仕事のできる、しかし遅刻癖のある男性がいました。
何度注意しても遅刻癖が治らない、でも営業成績が良く会社に利益をもたらしてくれるので会社は大目に見ていたそうです。
ある日、その社員がまた遅刻をしました。
その時大事な取引先から電話が入り、昨日までに送られてきているはずの資料がまだ送られてきていない、至急確認したいが担当者と連絡がつかないとのことでした。
その社員はぐっすり寝ていたわけですが、会社が連絡してもやはり電話には出ない、その資料というのもどこにあるかわからない状態で、信用を無くした取引先から危うく取引を切られるところでした。
このケースでは何を改善するべきだったのでしょうか?という質問です。
「寝坊癖、遅刻癖があるその社員を遅刻させないように指導すべきだ」
という答えには、プライベートまで管理することはできないですよね、とセミナー講師は答えました。
「上司にもっと厳しく部下を管理するよう指導すべき、上司を変えるべき」
という答えには、さんざん何度も言った結果であり、上層部も仕事ができるからと大目に見ていたので同じですよね、とセミナー講師。
「その人を解雇すべきだ」
という答えには、会社に利益をもたらす社員を辞めさせるんですか?とセミナー講師。
最終的に答えが出ず、セミナー講師が教えてくれた答えはこうです。
「遅刻をしても休んでも、誰でも対応できるように連携して仕事に当たればよい。
資料も共有して誰でもすぐわかるように整理するべきだ」
とのことでした。
人を変えるのではない、環境を整えて問題を問題にならないように対策をするのです。
当たり前のことが当たり前に誰でもできるわけではない、逆にその人がとても得意なことだってあるというのが個性です。
なんでも完璧にやろうとするがあまり、出来ないところにフォーカスして自分をさげすむ必要もないし、誰かに否定していいものでもない。
それよりも、その人が得意なことを十分に発揮していけるようにお互い補い合って助け合う、そんな環境づくりがとても大事です。