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いよいよオープンが近付いて来た東京ディズニーシーのファンタジースプリングスとファンタジースプリングスホテル。
新エリアのアトラクションももちろん楽しみですが、エリアやホテルの文化的・時代的な設定を感じさせる建物の建築様式や装飾様式に興味を惹かれる方も多いのではないでしょうか
昨年夏に、ファンタジースプリングスの情報が発表された際に、ファンタジースプリングスホテルを彩る装飾様式であるアール・ヌーヴォー(Art Nouveau)について記事を書きました。
リブログ記事の中で、ファンタジースプリングスホテルの最高級の客室棟であるグランドシャトーの宿泊ゲスト専用のレストラン、ラ・リベリュール(La Libellule)が「トンボ」という意味のフランス語であることに触れています。
東京ディズニーリゾートの中でも最もグレードが高いレストランの名前が「トンボ」というのを奇妙に感じる方もいらっしゃるのではないかと思いますが、記事の中では、アール・ヌーヴォー様式は草花や昆虫など自然をモチーフにした曲線的なデザインに特徴を持ち、この様式の旗手である工芸家エミール・ガレ(Émile Gallé, 1846-1904)は実際に「ラ・リベリュール」というトンボをモチーフとした作品を残していることをご紹介しました。
そんなわけで、エミール・ガレについてもっと詳しく知っておくと、ファンタジースプリングスホテルでの宿泊を楽しむ上でも役に立つに違いないと思い、その機会を窺っていたのですが…
今年はエミール・ガレ没後120周年の節目に当たるということで、渋谷にある松濤美術館が4月6日から6月9日までの間、「エミール・ガレ没後120年:奇想のガラス作家」という展覧会を開催中。
ファンタジースプリングスがオープンする週の週末に展覧会が終了するのは何らかの因果があるのだかどうだか気になります
さて、この展覧会ですが、ガレ没後120年を記念する趣旨か、展示品も約120点という充実した内容で、非常に興味を惹かれる特徴ある作品揃いでした。
2か所に分かれた展示室入口のパネルと猫の置物以外は全面撮影禁止なので、作品を写真でご紹介することができないのが非常に残念
3章に分かれた展示室には、アール・ヌーヴォーの工芸家としてのエミール・ガレの作品だけではなく、その前史時代のジャンヌ・ダルク等の歴史上の人物や歴史上の逸話をモチーフとした作品や、日本や中国の芸術や工芸品の影響を受けた異国趣味的な作品が多数展示されていて、アール・ヌーヴォーという新たな装飾様式が生み出される過程を追体験することができます。
また、ナンシー園芸協会の事務局長を務めるなど、植物学等の自然研究の専門家でもあったエミール・ガレの真骨頂とも言える、草花や昆虫をモチーフとした作品が多数展示されているのも展覧会の特徴の一つ。
リブログ記事では、ガレの作品「ラ・リベリュール」は日本美術の影響、特に北斎漫画の影響を反映しているのではないかと書きましたが、今回の展覧会では、エミール・ガレが草花や昆虫をモチーフとした作品を多く残したのは「人間の生命の根源は森の中にある」との彼の言葉に見られるように、自然の事物が持つ生命力に対する強い関心が根底にあることを学びました。
今回の展覧会がファンタジースプリングスホテルの豊かな装飾を堪能する上で役に立つのかどうかはホテルに宿泊してのお楽しみですが、展覧会はそれ自体としても大変面白い内容でしたので、19世紀末から20世紀初頭の工芸品に関心のある方は是非足を運んでみてください