皆さんこんにちは
先日東京ディズニーシーに行った際に、ヴェネツィアン・ゴンドラに乗って来ました
陽気な船頭さんたちのおしゃべりを楽しみながら運河を巡り、メディテレーニアンハーバーを一望することができる入り江に出ると、とても心が開放された気分になりますよね
あいにくこの日はドン曇りだったのが残念ですが…それでも私の心は晴れ晴れです
このように、水位の変化の痕跡まで再現された運河を見ていると、まるで本当にヴェネツィアに来たかのように感じます。
ところで、ヴェネツィアのゴンドラの船頭さんは「ゴンドリエ」と呼ばれますが、これは英語の"gondolier"をカタカナにしたものだと思われます。
イタリア語だと"gondoliere"なので、「ゴンドリエーレ」と書くと原語に近いと思うのですが、ヴェネツィアを再現したアトラクションなのに、なぜ英語風の「ゴンドリエ」という言葉を使うのでしょうか
その謎を解くカギは、ヴェネチアン・ゴンドラを漕ぐゴンドリエたちが握っている…かも…
東京ディズニーシーでゴンドラを漕ぐキャストさんたちを見ると、実際にヴェネツィアを訪れたことのある方は
(おやっ…!?)
と思われるかも知れません。
こちらの写真は公式HPのヴェネツィアン・ゴンドラの紹介ページより。
そしてこちらは公式ブログから。お子さまゲスト向けのゴンドリエ体験プログラム付きのバケーションパッケージについての記事に掲載されているゴンドリエの集合写真。
どこが (おやっ…!?) のポイントなのかと言うと、それは 女性のゴンドリエ なんです。
実はヴェネツィアでは、伝統的にゴンドリエは男性の就く職業とされていて、2009年に至るまで女性のゴンドリエは一人も居ませんでした。
2009年に23歳で女性初の公式ゴンドリエとなったジョルジア・ボスコロ(Giorgia Boscolo)さんについての記事が、イギリスのガーディアン紙に掲載されています。
これによると、なんと900年もの間、ゴンドリエは男性が独占する職業だったようですね
しかも、歴史的にゴンドリエの仕事は父親から息子へと代々受け継がれるものであったそうで、400日間の研修を経てゴンドリエ資格を付与する研修制度をヴェネツィア市が導入したのは2007年のこと。
記事で紹介されているジョルジアさんは、この研修制度を使ってゴンドリエ資格を取得した最初の女性ということだそうですが、現在に至ってもなお、女性のゴンドリエにお目にかかることはほとんどありません。
東京ディズニーシーのメディテレーニアンハーバーがテーマとしているのは、20世紀初めの南ヨーロッパの港町。
この時代設定に忠実に従えば、女性のゴンドリエは存在しないことになります…
こういった歴史上の経緯もあってのことなのか、イタリア語の「ゴンドリエーレ」(gondoliere)は男性名詞。
ジョルジアさんのような女性のゴンドリエを指す場合は、元の言葉を女性化させて、「ゴンドリエーラ」(gondoliera)と呼ぶようになったみたいです。
たとえば以下のイタリアのレプブリカ紙の記事には、「ジョルジアの物語」(La storia di Giorgia)と題し、「ヴェネツィア唯一の女性ゴンドリエ」という意味で、"unica gondoliera di Venezia"と書かれてあります。
このように、イタリア語では男性/女性に応じてゴンドリエーレ/ゴンドリエーラと言葉の使い分けが行われるようになった一方、男性名詞・女性名詞の区別の無い英語ではどちらも「ゴンドリエ」と呼ぶことができます。
テーマの再現に徹底したこだわりを見せる東京ディズニーシーが、ヴェネツィアン・ゴンドラの船頭をイタリア語ではなく敢えて英語で「ゴンドリエ」と呼ぶのはなぜなのか
テーマポートの時代設定に反して、ゴンドリエーレとゴンドリエーラが等しく活躍する未来のヴェネチアの姿を先取りしたことによるのかも知れません。