皆さんこんにちはニコ

 

 

今日はディズニーランドパリのウォルト・ディズニー・スタジオにある「トワイライト・ゾーン・タワー・オブ・テラー」 (The Twilight Zone Tower of Terror) の中にある一枚の絵画をご紹介したいと思います。

 

 

 

 

タワー・オブ・テラーの舞台となるのは、黄金時代のハリウッドにあるホテル、ハリウッド・タワー・ホテルです。

 

 

フロリダのディズニー・ハリウッド・スタジオにも同じ設定のアトラクションがありますが、この「タワー・オブ・テラー」をテーマにした1997年のテレビ映画 "Tower of Terror" では、1939年のハロウィーンにこのホテルで「事件」が起きたことになっています。

 

 

ハリウッド黄金時代は1920年代から50年代にわたる長い時期ですが、このアトラクションがテーマとしているのは1930年代の世界、ということになります。

 

※東京ディズニーシーの「タワー・オブ・テラー」は1910年代のニューヨークが舞台ですので、時代設定も場所も異なります。

 

 

こういった時代設定を頭に入れて、ハリウッド・タワー・ホテルのロビーに入ると、気になってくるのがコチラの絵画。

 

 

 

 

これは、ロシア皇帝アレクサンドル2世の皇后マリア・アレクサンドロヴナ(Maria Alexandrovna, 1824-1880)の肖像画

 

 

そして、この肖像画を描いたのは、ドイツの画家、フランツ・ヴィンターハルターFranz Xaver Winterhalter, 1805-1873)。

 

パリを拠点に活動した肖像画家で、フランス国王ルイ・フィリップの宮廷画家として名声を高めた後、イギリスのヴィクトリア女王、ナポレオン3世、スペイン女王イサベル2世など、ヨーロッパ諸国の王侯貴族の肖像画を数多く手がけた人物です。

 

 

当代きっての肖像画家の手になる作品ということで、「名画」の一つと言って差し支えないと思いますが、ところでこの肖像画、現実世界では本物がどこにあるかご存じでしょうか!?

 

 

答えは、ロシアの古都サンクトペテルブルクにある エルミタージュ美術館 です。

 

 

(コチラがエルミタージュ美術館所蔵の肖像画。画像は同美術館HPより引用)

 

 

本物がエルミタージュ美術館にあるのだから、この絵画は名作のレプリカ…と結論付けてしまいたくなるのですが。

 

 

実はこのアトラクションがテーマとしている1930年代に、エルミタージュ美術館では大事件が起きています

 

 

その事件とは 1930年から1931年にかけて行われた ソヴィエト政府による美術品の売却 です。

 

 

ロシアでは第一次世界大戦中の1917年に革命が起きて皇帝ニコライ2世が退位して帝政が崩壊します。

 

代わって成立したソヴィエト政府は1928年に国家の工業化を推し進めるための「第一次5か年計画」を発表しますが、急速な工業化投資が国家財政を圧迫し、外貨が欠乏するようになっていました。

 

 

こうした事態を打開するため、ソヴィエト政府はエルミタージュ美術館所蔵の美術品の中でも市場価値の高いものを海外に売却してしまいます。

 

ファン・アイクやティツィアーノ、レンブラント、ルーベンス、ラファエロなどなど、歴史に名を遺す著名な芸術家の作品を含め、250点ほどの作品が売却対象となりました。

 

中でも、アメリカの銀行家、アンドリュー・メロン(1855-1937)が購入した21点の絵画は、ワシントンDCのナショナル・ギャラリーの建設資金とともに1937年に米国政府に寄贈され、現在に至るまで同美術館の最重要所蔵物となっています。

 

 

このような1930年代のエルミタージュ美術館所蔵の美術品に関わる歴史を振り返ると、ヴィンターハルターの手がけたこの肖像画も、

 

・ ハリウッド・タワー・ホテルのオーナーがソヴィエト政府が放出した作品を購入し、コレクションに加えた

 

というような、歴史を基にしたフィクションだったりして…と思ってしまいます。



実際の歴史上は、この作品は売却されることなく現在もエルミタージュ美術館にあるわけですが、もし資金繰りに困ったソヴィエト政府が売却していたら、こうしてハリウッドの富豪の手に渡っていたのかも知れませんうーん

 

 

もしそこまで考えて、わざわざエルミタージュ美術館所蔵の作品を飾っているんだとしたら、本当にすごいですびっくり

 

 

ちなみに、今はアベンジャーズがテーマのアトラクションにリニューアルされてしまいましたが、カリフォルニアのディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーのハリウッド・タワー・ホテルには、これまたフランツ・ヴィンターハルターが手掛けた皇帝ナポレオン3世とウジェニー皇后の肖像画が飾られていました。

 

 

ひょっとすると、フランツ・ヴィンターハルターとハリウッド・タワー・ホテルとの間に、何かバックストーリーがあるのかも知れませんねビックリマーク