皆さんこんにちはニコ

 

 

昨日、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの10-12月期の決算が発表されましたビックリマーク

 

 

これによると、2021年3月期の事業年度の損益は、7-9月期時点から10-12月期時点で、以下のように変化しています。

 

・ 売上高: 591.5億円 ⇒ 1,371.1億円

・ 売上原価: 626.0億円 ⇒ 1,219.9億円

・ 売上総利益: ▲345.5億円 ⇒ 151.3億円

・ 販売費・一般管理費: 207.3億円 ⇒ 350.0億円

・ 営業損益:▲241.8億円 ⇒ ▲198.4億円

 

 

12月時点でも営業損失が▲198.4億円に上り、東京ディズニーランド及び東京ディズニーシーの両パークが7月に再開した後も苦しい運営が続いていることが推察されますが…あせる

 

 

実は7-9月期と10-12月期では明確な変化が観察されます

 

 

数字をよく注意してご覧になっている方はお気付きでしょうが、営業損失は7-9月期時点では▲241.8億円でした。

 

 

すなわち、10-12月期時点になって4月以降の累積の営業損失が減少している、ということは、

 

・ 10-12月期に限って見れば、営業利益を上げている

 

ということになります。

 

 

この点は、決算資料が事業年度が始まる4月以降の累積値になっているので分かりにくいのですが、当期の決算値から前期の決算値を差し引けば、当期の損益状況を知ることができます。

 

 

では実際に、7-9月期と10-12月期それぞれの期間損益を比較してみましょう。

 

【2020年7-9月期】

・ 売上高: 529.9億円

・ 売上原価: 596.4億円

・ 売上総利益: 33.4億円

・ 販売費・一般管理費: 118.8億円

・ 営業損益:▲85.3億円

 

【2020年10-12月期】

・ 売上高: 779.6億円

・ 売上原価: 593.8億円

・ 売上総利益: 185.8億円

・ 販売費・一般管理費: 142.4億円

・ 営業損益:+43.4億円

 

 

このように、7-9月期は▲85.3億円の赤字であった営業損益が、10-12月期は43.4億円の黒字に転換していることが分かります。

 

 

この間、売上高は529.9億円から779.6億円へと増加していますので、どうやらこの辺りの売上高が赤字・黒字の分かれ目となることが示唆されますね。

 

 

このブログでは以前、これまでの東京ディズニーリゾートの売上高とリゾートの運営に係る経費との関係を基に、赤字・黒字の分かれ目となる年間売上高(損益分岐点)を2,746.6億円と推計しました。

 

 

詳細については、以下のリブログ記事をご覧いただけると幸いですほっこり

 

先ほどご紹介した7-9月期及び10-12月期の期間中の売上高は、3か月間の数字ですので、4倍して年間に相当する数字に換算してみましょう。

 

・ 7-9月期の売上高(年率換算):2,119.4億円

・ 10-12月期の売上高(年率換算):3,118.6億円

 

となり、ちょうど7-9月期から10-12月期にかけて、赤字・黒字の分かれ目となる売上高の水準2,746.6億円を超えたことが分かります。

 

 

リブログ記事の推計を基にした、売上高と営業損益の関係を示すグラフ上で、7-9月期及び10-12月期の数値を表してみると、ピッタリとは行きませんが、概ね推計された関係と整合的な結果となっていることが分かります。

 

 

 

 

・ 7-9月期から10-12月期にかけての売上高増加の要因は何かはてなマーク

 

 

これは、端的に入園者数の増加だと考えられます。

 

 

7月当初は入園者数をかなり限定した形での再開となったようですが、実際にインパークした人々のリポートを見ていても、次第にアトラクションのキューラインや待ち時間が長くなっていく様子を見て取ることができましたので、やはり入園者数を徐々に拡大していったのだと思われます。

 

 

7-9月期の決算説明資料を見ると、7-9月期の入園者数は両パーク合わせて269万人。これは1日当たりの平均では3万人程度になります。

 

 

10-12月期の入園者数については、決算説明資料がまだ公表されておらず、決算補足資料では、4-12月の入園者数が、前年同期と比較して「下回った」という、定性的な説明しかされていないため、ハッキリした数字が分かりません。

 

 

しかし、

 

・ 7-9月期と比べて売上高が約1.5倍に増加している

 

という事実から類推すると、1日平均4万5,000人程度の来園があったのではないかと考えられます。

 

 

オリエンタルランドの損益分岐点を分析した上記のリブログ記事では、1日平均4万7,000人程度の来園が無いと利益を上げられないのではないかはてなマークと書いていますが、昨年の10-12月期について言えば、これよりも少ない入園者数で営業黒字を上げていることになります。

 

 

この点は、おそらく、年間パスの利用が停止となり、抽選で当選した人のみが入園できる運用

に切り替えたことの影響が大きいのではないかと思います。

 

 

企業会計上、年間パスのような期間入場券は、前受金として流動負債に計上され、期間損益の対応関係を明確にする観点から、何らかの季節パターンを想定して、4四半期に案分して売上計上されていると考えられます。

 

 

このため、

 

・ 年パス購入者の実際の入園回数が想定を上回れば、ゲスト1人当たりの売上は低下し

 

・ 年パス購入者の実際の入園回数が想定を下回れば、ゲスト1人当たりの売上は上昇する

 

という関係が成立するのではないでしょうか。

 

 

したがって、年パスを持っているゲストの入園が制限されたことで、同じ売上高に対応する入園ゲストの数が少なくなっているのではないかと考えられます。

 

 

いずれにせよ、現在は緊急事態宣言の再発令に伴い、両パークとも5,000人以下のキャパシティでの運営を行うよう政府から働きかけを受けている状況ですから、1-3月期は10-12月期よりも入園ゲスト数・売上高が減少し、再び営業赤字に転落する可能性も高いと見込まれます。

 

 

コロナ禍の下で採算の合うパーク運営を確立するためにクリアすべきハードルは、依然として高いのかも知れません。