いつも遊びに来て下さって、ありがとうございます
外出自粛がこれだけ長期にわたると、真面目に外出を控えて自宅でじっとしている人ほど、たくさん映画を観てしまって、だんだん観たいものが無くなって来ているんじゃないでしょうか
果たしておススメの鑑賞方法と言えるかどうかは分かりませんが、ディズニーのアニメ映画を、制作時の時代背景を理解しながら鑑賞すると、ウォルト・ディズニーが時代の荒波に飲まれながら、どのようにして今日のディズニー・カンパニーの発展の基礎を築いたのかを知ることができて、面白いですよ。
今日は、我らがアイドル、ドナルドダックを主役に据えた "Commando Duck"(1944) という短編映画をご紹介したいと思います。
日本語で言えば、『特殊部隊員・ドナルド』といった感じでしょうか。
特殊部隊員のドナルドダックが、敵軍の奥深くに位置する飛行場を殲滅せよとの指令を受け、パラシュートで敵軍の奥深くに降下する、というお話しなんですが…
この映画、なんと 日本人が登場 します。しかも 敵軍として
ディズニー映画に登場する日本人と言えば、『トイ・ストーリー2』(1999年)に登場する、カネに物を言わせる感じの悪いおもちゃコレクターのMr. Konishiがピンと来ますが…
この映画に登場する日本人は、その比ではないです
まず、映画を観ていただくと分かると思いますが、酷い訛りの英語を話し、所作も滑稽な人種として風刺的に描かれています。
さらに、日本軍兵士の言葉として以下のようなセリフが登場します(2分30秒辺り)。
"Japanese custom say always shooting a man in the back please."
(後ろから敵を撃つのが日本の伝統なんだ、よろしく)
この映画、制作年が示すように、戦時中の映画なので、このセリフは1941年の日本軍による真珠湾への奇襲攻撃を強く意識したものだと解釈できます。
なぜディズニーがこのような映画を作ったのかと言うと、これ、アメリカ国民の戦意高揚を目的としたプロパガンダ映画なんですね。
一説にはウォルト・ディズニーは強い愛国心から進んでこのようなプロパガンダ映画を制作した、とも言われています。
他方で、戦時中のディズニー社が資金面で大変な困難に直面していたことも事実で、会社の存続のために、なりふり構っていられない状況であったことも察せられます。
なにせ、ドイツ、イタリア、日本といった敵国の市場で全く商売ができなくなったばかりか、連合国側でも、イギリスなどは民間企業が国内市場から得た収益を凍結してしまっていたそうです。
僕としては、20世紀前半という時代に、女性やユダヤ人、アフリカン・アメリカンといったマイノリティに対しても積極的に活躍の場を提供していたウォルト・ディズニーが、人種差別主義者であったとは思いたくありません。
それでも、戦時下という異常な状態が、ウォルト・ディズニーをしてこのような映画を作らせてしまうのかと思うと、改めて戦争の影響力の大きさを実感せざるを得ません。
この映画を今日の目線で、「人種差別的」と片付けてしまうのは簡単ですが、当時アメリカ政府に対する協力要請を拒んでいたとしたら、今日のディズニーは存在していなかったのかも知れない…と思うと、なんとも複雑な気持ちになります。