4 旧約4  蛇の誘惑  Temptation of Serpent

 

 蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。 それを食べると、目が開け、神のように善悪を知るものとなることを神はご存じなのだ。」(創世記3:4-5

 

  And the serpent said to the woman, "You will never die, but God knows that as soon as you eat it your eyes will be opened and you will become like God, knowing good and evil." (Gen 3:4-5)

 

 あらゆる生き物の中で最も賢いのは蛇でした。蛇は女に言いました。

蛇「園のどの木の実も食べてはならないなどと神は言われたのかい?」

女「そんなことありません。どの果実を食べても良いのです。ただ、園の中央の木の実だけは食べてはいけない、触れてもいけない、死んではならないからと神さまは言われました。」

蛇「そんなことはない!絶対死なない!それを食べると、目が開いて、『神のように』なり、善悪を知ることがきっと神は妬ましいのさ。」

 

 その実を見ると、とてもおいしそうで、見栄えが良く、いかにも賢くなれそうだったので、女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べました。すると、二人の目が開けて、自分たちが裸であることがわかって恥ずかしくなり、慌ててイチジクの葉でまたを隠しました。

 その日の夕方、神が近くに来られたとき、アダムとエバは神から逃げて木陰に隠れました。

神は言われました。「どこにいるのか?」

 

 神は「善悪の知識の木」、通称「知恵の木」から食べることを厳しく禁じました。神はなぜこのんな試練の木をエデンの園に置いたのでしょうか?この木はどう生きるかの決断の分れ道だったのかもしれません。神の言葉を信じて生きるか、自分を「神のように」して生きることか。

 聖書の注解書などでは「知恵の木」をブドウやイチジクと考えるものもあります。また、ラテン語の「悪」(malus)と「リンゴ」(malum)の類似からか、しばしばリンゴに描かれる美術作品もあります。。


 


デューラー「アダムとエバ」DÜRER, Albrecht Adam and Eve 1507 Oil on panel, 209 x 81 cm Museo del Prado, Madrid


 

 

ラファエロ「アダムとエバ」RAFFAELLO Sanzio Adam and Eve 1509-11 Fresco, 120 x 105 cm Stanza della Segnatura, Palazzi Pontifici, Vatican

 

 

 

ファン・デル・フース「堕罪」GOES, Hugo van der The Fall 1467-68 Oil on oak, 33,8 x 23 cm Kunsthistorisches Museum, Vienna

 

 楽園の蛇は8世紀ぐらいまでは単に動物の蛇として描かれましたが、それ以降はドラゴンなどの怪物にも描かれるようになりました。12世紀末のパリの神学者ペトルス・コメストルが修道士のための教科書『ヒストリア・スコラスティカ』に「似たものは似たものに賛同するので、悪魔は女の顔を持つ蛇を使った」と書きました。その影響は絶大で、それ以来500年間、西洋美術では人間の顔を持つ蛇が描かれることになりました。

 

 デューラーは動物の蛇、ラファエロは上半身が人間の蛇、フースはサマランダー(火トカゲ)の体の蛇を描いています。


 余談ですが、ヨーロッパでは美術史専攻の学生は美術館がしばしば無料になります。何年も前のことですが、フースの絵があるウィーン美術史美術館は私にシーズンチケットをくれたので、何日も無料で美術館に行くことができました。