3 旧約3  エバの創造

 

主なる神はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。(創世記2:21-22

 

So the LORD God cast a deep sleep on the man; and, when he slept, He took one of his ribs and closed up the flesh at that spot. And the LORD God formed the rib that He had taken from the man into a woman. (Gen 2:21-22)

 

 神はエデンの園を造り、食べるに良いいろいろな果樹を生えさせ、園の中央に「命の木」と「善悪の知識の木」を生えさせました。そして、アダムをエデンの園に住まわせ、土を耕し、その管理を任されました。

 神は言われました。「アダム、すべての木の実は自由に取って食べてもよい。しかし、善悪の知識の木からだけは、決して食べてはならない。食べると必ず死ぬからだ。」

 アダムは答えました。「はい、神さま、あなたを信じて、あなたの言葉を守ります。」

 神はアダムが一人でいるのを見て、あらゆる生き物をアダムのところに連れて来られました。アダムは生き物に名前を付けましたが、彼にふさわしい助け手を見つけられませんでした。

 そこで、神はアダムを深い眠りに落とされ、アダムの「あばら骨」の一部を抜き取って、そのあばら骨から「女」を造られました。彼女と出会ったとき、アダムは歓喜の歌を歌いました。

「ついにこれこそ、わたしの骨の骨、わたしの肉の肉。

 探し求めた助け手、女性(イシャー)だ。
  まさに男性(イシュ)の半身だ!」

 

 

 

創世記1章では男も女も「神のかたち」(Imago Dei)に創造され、平等な人格的存在であることが示されています。しかし、第2章では別の神話が展開されて女が男の「あばら骨」から造られたと書かれています。この女性の創造は象徴的です。もし、頭の骨からならば、女性は男性の支配者、足の骨からならば、男性の奴隷を意味したかもしれません。古代人は心臓に心があると思っていたので、心臓を覆うあばら骨からは心が分かり合える存在を意味したのかもしれません。
 

 

 
 

ミケランジェロ「エバの創造」1509-10年 フレスコ 170 x 260 cm システィナ礼拝堂 MICHELANGELO Buonarroti Creation of Eve 1509-10 Fresco, 170 x 260 cm Cappella Sistina, Vatican

 


 

 エバの創造の場面は、伝統的にアダムのわき腹からエバが出てくるように描かれました。そしてこの旧約の物語は新約のキリストが十字架で槍を刺されたことの予型と考えられました。槍で刺された傷から流されたキリストの血潮から教会が誕生したという解釈で、エバは教会を象徴します。この槍を刺した兵卒がロンギヌスで、この槍が「ロンギヌスの槍」と呼ばれます。余談ですが、この題材はアニメのエヴァンゲリオンなどでも用いられました。


 

 

エバの創造とキリストが槍で刺される場面、『貧者の聖書』(Biblia pauperum)1460-63年、オランダ。