69 新約27 嵐を静めるイエス Jesus Calming the Storm

 

湖を渡って行くうちに、イエスは眠られた。すると、暴風が吹き荒れて、彼らは水をかぶり、危うくなった。弟子たちはイエスを起こして、言った。「先生、先生、死にそうです。」イエスが起き上がって、風と波を叱ると、暴風は止んで凪になった。(ルカ823-25

 

As they were sailing, Jesus fell asleep. Suddenly a storm broke on the lake, and the boat was in great danger. The disciples woke him up, saying, "Master, Master! We are about to die!" He got up and rebuked the wind and the water; they quieted down, and there was a great calm.

 

 イスラエルの北部にはガリラヤ湖という美しい湖があります。イエスの弟子の四人はその土地の漁師で、船と湖については知り尽くした熟練した者たちでした。一行は湖の向こう岸に渡ろうと船出しましたが、突然の激しい嵐に船は転覆しそうになり、彼らは水をかぶって死を覚悟しました。そのような状況にもかかわらず、イエスは船の中で眠っていました。弟子たちは慌ててイエスを起こしました。イエスは嵐を静めて、弟子たちの不信仰をたしなめました。弟子たちは恐ろしい自然の猛威を従わせたイエスの力を目の当たりにして、一体イエスは何者なのだろうかと驚きました。

 

福音書が書かれた当時はローマ帝国によるキリスト教への激しい迫害がありました。迫害の中の教会は嵐の中の小船のような状態だったでしょう。ローマ帝国はすべての人々に、皇帝を神として崇めることを求めましたが、クリスチャンはイエス・キリストだけが主と告白し、皇帝礼拝を拒絶しました。ローマ人たちは、クリスチャンを闘技場で猛獣に襲わせたり、競技場で処刑したりして見世物にしました。

 

そのため、クリスチャンはカタコンベと呼ばれる地下墓地に隠れて礼拝したり、秘密の暗号に魚を用いたりしました。魚(ἰχθύς)はイエス(Ἰησοῦς)、キリスト(Χριστός)、神の(θεοῦ)、子(υἱός)、救い主(σωτήρ)というギリシア語の頭文字となっています。




レンブラント「ガリラヤ湖の嵐の中のキリスト」1633年 油彩・画布 160 × 127 cm ガードナー美術館 ボストン  Rembrandt Christ in the Storm 1633 oil on board 160 x 127 cm Stewart Gardner Museum, Boston



ウジェーヌ・ドラクロワ「ゲネサレ湖上のキリスト」1854年 油彩・画布 60 x 73 cm ウォルター美術館 ボルチモア DELACROIX, Eugène Christ on the Lake of Gennezaret 1854 Oil on canvas, 60 x 73 cm Walters Art Museum, Baltimore