68 新約26 いやしの奇跡 Miracles of Healing

 

さて、重い皮膚病の人が、イエスのところに来てひざまずいて願って言った。「お望みならば、あなたはわたしを清くすることがおできになります。」イエスが深く憐れんで、手を差し伸べてその人に触れて言った。「わたしは望む。清くなれ。」すると、たちまち重い皮膚病は去り、その人は清くなった。(マルコ1:40-42

 

Now a leper came to Jesus, kneeling down to Him and saying to Him, "If You are willing, You can make me clean." Then Jesus, moved with compassion, stretched out His hand and touched him, and said to him, "I am willing; be cleansed." And immediately the leprosy left him, and he was cleansed.

 

 イエスの時代には、重い皮膚病の患者たちは人前に出ることを禁止され、人里離れたところに住み、一般人が近づかないように、「汚れている」と叫ばなければなりませんでした。しかし、患者の一人は決死の覚悟でイエスのもとに来て、癒してほしいと願いました。

 

誰もが忌み嫌った病人にもかかわらず、イエスは深く憐れみ、その体に触れて、その人の病気を癒しました。イエスは、その人に祭司のところに行って、癒しを証明してもらって社会復帰するように命じました。

 

当時の人々は、病気や障害は、それを患う本人、またはその人の先祖の罪への祟りとして、悪霊によって引き起こされると考えていました。しかし、イエスは、病気や障害の原因は本人の罪でも先祖の罪でもないと教えて、人々を癒しました(ヨハネ93)。

 

「重い皮膚病」と訳される言葉は、ヘブライ語のツァラアト (צָרַעַת) 、ギリシア語のレプロス(λεπρός)を訳したもので、かつては「らい病」と訳されたものです。この訳語は今では差別語と扱われるため、「重い皮膚病」と訳されるようになりました。これはらい菌によって起こる感染病で、らい菌の発見者ハンセンの名をとって1950年代からはハンセン病と呼ばれるようになりました。この病気は末梢神経を侵し、多くの場合は人間の風貌を崩して死に至らせるために、歴史的にこの病気の患者は隔離され、忌み嫌われて差別されました。

 

 1940年代に治療薬ができてからは不治の病ではなくなりましたが、東南アジア、アフリカ、南米などでは未だに患者が多くいるそうです。日本では新規の患者はいないそうですが、社会復帰できない老年の元患者たちは療養所でその余生を過ごしておられます。ハリー・シンは学生時代に療養所の一つを訪れ、医師や元患者から講演を聞いたことがありました。

 



 コジモ・ロセッリ「山上の説教と重い皮膚病の人のいやし」(部分)1481-82年 フレスコ 349 x 570 cmシスティナ礼拝堂 ヴァチカン ROSSELLI, Cosimo Sermon on the Mount 1481-82 Fresco, 349 x 570 cm Cappella Sistina, Vatican



ドゥッチョ「盲人の癒し」ナショナル・ギャラリー ロンドン DUCCIO di Buoninsegna Healing of the Blind Man 1308-11 Tempera on wood, 43 x 45 cm National Gallery, London



エル・グレコ「盲人のいやし」1567年 油彩・パネル 65.5 x 84 cm ドレスデン絵画館 GRECO, El Christ Healing the Blind c. 1567 Oil on panel, 65,5 x 84 cm Gemäldegalerie, Dresden



 パルマ・ジョヴァン「ベテスダの池」
PALMA GIOVANE The Pool 1592 Oil on canvas Collezione Molinari Pradelli, Castenaso