50 新約8 エジプト逃避と幼児虐殺 Flight into Egypt and Massacre of Innocents
マギたちが帰って行くと、主の天使が夢でヨセフに現れて言った。「起きて、子供とその母親を連れて、エジプトに逃げ、わたしが告げるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが、この子を探し出して殺そうとしている。」(マタイ2:13)
Now when Magi
had departed, behold, an angel of the Lord appeared to Joseph in a dream,
saying, "Arise, take the young Child and His mother, flee to Egypt, and
stay there until I tell you; for Herod will seek the young Child to kill
Him." (Mt 2:13)
マギたちが東方に帰った後に、再び天使が夢でヨセフに現れて言いました。
「ヨセフ、早く起きなさい。
ヘロデ王が、この子を探し出して殺そうとしています。
マリアとイエスを連れて、すぐにエジプトに逃げなさい。」
ヨセフは目が覚めるとすぐに、マリアを起こし、夜中のうちに幼子を連れて、ベツレヘムを旅立ちました。ヨセフたちには、マギたちから宝をもらったおかげで、豊かな逃走資金ができました。
一方、マギたちにだまされたと知ったヘロデ王は激怒し、直ちに軍隊を招集し、マギたちから確認した星の現れた時期から、ベツレヘム周辺の2才以下の男の子をすべて虐殺することを命じました。軍隊はその命令を実行しました。その結果、誰も慰めることのできない、子供を失った母親たちの激しい泣き声がいつまでも響くことになりました。
ヨセフたちは無事エジプトに到着し、ヘロデ王が死ぬまでそこにとどまりました。ヘロデが死ぬと天使が夢にヨセフに現れ、そのお告げに従ってヨセフはイスラエルに帰国し、ガリラヤのナザレに戻りました。そこでイエスは元気に育っていきました。
マタイ福音書で描かれるイエスの生涯は、イスラエルの失敗の歴史を再びやり直すように構成されています。エジプトに逃避し、再び帰還すること、紅海渡渉と洗礼、荒野の放浪と荒野の誘惑、シナイ山での十戒と山上の説教など、イスラエルが失敗した罪の歴史をキリストがやり直し、乗り越えていきます。
カルドッチョ「エジプトへの逃避」油彩・画布
エルミタージュ美術館 サンクトペテルブルグ CARDUCHO, Bartolomé The Flight into Egypt
1600-03 Oil on canvas, 127 x 105 cm The Hermitage, St. Petersburg
アンサルド「エジプトへの逃避」1620年代 油彩・画布 170 x 127 cm バルベリーニ美術館 ローマ ANSALDO, Giovanni Andrea The Flight into Egypt 1620s Oil on canvas 170
x 127 cm Galleria Nazionale d'Arte Antica, Rome
「聖家族のエジプト到着と偶像の倒壊」『偽マタイ福音書』Latin 2688 fol. 17r, Bibliothèque
nationale de France, Paris
新約偽典には聖家族がエジプトに入国したと同時に偶像が倒壊したとの伝説があり、『貧者の聖書』などにもその場面があります。
ジョット「幼児虐殺」GIOTTO di Bondone Massacre of the Innocents 1304-06 Fresco, 200 x 185
cm Cappella Scrovegni (Arena Chapel), Padua
ルーベンス「幼児虐殺」1611-12年 油彩・板 142 x 182 cm ナショナル・ギャラリー ロンドン