49 新約7 マギたちの礼拝 Adoration of the Magi

 

マギたちはその星を見て喜びにあふれた。家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。(マタイ2:10-11

 

When the magi saw the star, they rejoiced with exceedingly great joy. And entering the house, they saw the young Child with Mary His mother, and falling down they worshiped Him. And opening their treasures, they presented Him gifts: gold, frankincense, and myrrh. (Mt 2:10-11)

 

 イエスが生まれてしばらくしたときのことです。東方から一団の人々が、星を手掛かりにエルサレムのヘロデ王のもとに来ました。東方の国々の貴族であり、占星術の学者であるマギたちは、巨大な星の出現は「世界の大王」の誕生と考えて、ユダヤの王宮に王子を探しに来たのでした。

 

「ユダヤ人の王として生まれた方は、どこにおられますか。

わたしたちは大王の星を見て、拝みに来たのです。」

 

ユダヤ人を支配しながら、自らはユダヤ人でない、イドマヤ人のヘロデ王は、不安を覚えました。ヘロデは、とても猜疑心が強く、残忍で、自分の王位を守るために、これまでに自分の妻子や親戚を何人も殺してきたような人物でした。彼は、すぐに祭司長や律法学者を集め、メシアがどこに生まれるのかを問いただし、それがベツレヘムだとつきとめました。マギたちからは星の現れた時期を確かめ、メシアを見つけたら、知らせるように頼んで、邪魔者を抹殺する準備を始めました。

 

 それとは知らずに、エルサレムを出発したマギたちは、再び、大きな星を見つけて喜び、その星に導かれて、ベツレヘムの一つの家に到着しました。家に入ってみると、幼子は母マリアと一緒にいました。彼らはひれ伏してイエスを礼拝し、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を献げました。夢でお告げを受けた彼らは、エルサレムには戻らずに、帰国しました。

 

 

東方から来たマギたちを、よく3人の博士たち、3人の王たちと言います。しかし、聖書には彼らの人数は書かれておらず、3種類の贈り物がされたことが記されています。後に3人には、メルキオール、カスパル、バルサザールという名前まで付けられました。絵画では、しばしば3人は白人、黒人、東洋人に描かれ、世界のすべての人種の代表がメシアを礼拝したように描かれます。そして、異邦人たちにキリストが現わされたこの出来事を「公現日」(エピファニー)として今でも16日に記念します。




 デューラー「マギたちの礼拝」1504100 x 114 cm 油彩・板 ウフィツィ美術館 フィレンツェ DÜRER, Albrecht Adoration of the Magi 1504 Oil on wood, 100 x 114 cm Galleria degli Uffizi, Florence
 長髪のマギは画家の自画像 



 ボッティチェリ「マギたちの礼拝」1475年頃 テンペラ・板 111 x 134 cm ウフィツィ美術館 フィレンツェ BOTTICELLI, Sandro Adoration of the Magi c. 1475 Tempera on panel, 111 x 134 cm Galleria degli Uffizi, Florence
 右端の人物は画家の自画像。



ダ・ヴィンチ「マギたちの礼拝」LEONARDO da Vinci Adoration of the Magi 1481-82 Oil on panel, 246 x 243 cm Galleria degli Uffizi, Florence



「東方三賢人」6世紀初頭、モザイク、サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂 、ラヴェンナ Basilica di Sant'Apollinare Nuovo, Ravenna

 

 ドイツのケルン大聖堂にはマギたちの頭蓋骨が聖遺物として金細工の櫃に入れられています。かつては多くの巡礼者たちがそれを目当てにケルンを訪れましたが、宗教改革の影響で巡礼者が激減したために、13世紀に始まった大聖堂建設は財政難で19世紀までかかったそうです。

 


ケルン大聖堂



聖堂内の金細工の櫃(マギの頭蓋骨が中に!?)