40 外典1 トビアと天使ラファエル Tobias and Angel Raphael
そこで、天使ラファエルが二人を癒すために遣わされた。すなわち、トビトは目が見えるように、目から白い幕を取り除くためであり、ラグエルの娘サラはトビトの息子トビアに妻として与え、彼女から悪魔アスモダイを引き離すためであった。(トビト記3:17)
And Angel Raphael was sent to heal
them both, that is, to scale away the whiteness of Tobit's eyes, and to give
Sara the daughter of Raguel for a wife to Tobias the son of Tobit; and to bind
Asmodeus the evil spirit. (Tob 3:17)
アッシリアのニネベで捕囚となっている人々の中に、トビトという信心深いイスラエル人がいました。彼にはハンナという妻とトビアという息子がいました。トビトは貯金した銀10タラントンをメディアにいる従兄弟ガバエルに預けましたが、イスラエル人への迫害が起こり、メディアへは行けなくなり、全財産も失いました。
トビトが62才のある日、庭で昼寝していると、雀がトビトの両目に糞をしました。それが原因で彼は失明しました。トビトは熱心に祈った後、息子トビアを呼び、イスラエル人の嫁をもらうことと、従兄弟に預けた銀をもらうことを命じました。
トビアは父の命令に従い、信頼できる案内人を探して来ました。実は、その人は神から遣わされた天使ラファエルでした。トビアとラファエルと小犬の冒険の旅が始まりました。彼らはまず、チグリス川で大魚を捕まえました。ラファエルに命じられて、トビアは薬になる、魚の心臓、肝臓、胆のうを取っておきました。
次にラファエルに導かれて、トビアは、叔父ラグエルの家に来ました。トビアはラグエルの一人娘のサラに恋をしましたが、彼女には悪魔が取り付いていたので、今まで7人の婚約者が初夜に死んでいたのです。しかし、トビアはラファエルの忠告に従い、魚の心臓と肝臓を香と一緒に燃やすと、悪魔は追い出されて、彼らは無事結婚できました。彼らの披露宴にラファエルがトビトの従兄弟ガバエルも呼んで来てくれたおかげで、預けた銀も返してもらうことができました。
トビアは、ラグエルから、娘と財産の半分をもらって、ニネベに帰りました。魚の胆のうをトビトの目に塗ると、トビトは4年ぶりに目が見えるようになりました。トビトとトビアは、ラファエルに全財産の半分を報酬として渡そうとしますが、ラファエルは自らが天使である正体を明かし、天に帰って行きました。
プロテスタント教会の人々にとって旧約外典(続編)の物語は馴染みのないものでしょう。16世紀までは旧約39巻、新約27巻の正典と同様に旧約外典も多く教会で読まれ、キリスト教美術に描かれてきましたが、宗教改革以降、プロテスタント教会はそれらを除外したからです。天使ラファエルは正典には登場しません。しかし、今でも多くのヨーロッパの美術館では巨匠たちが描いた旧約外典の美術作品が正典の作品と一緒に展示されています。
ボッティチェリ「三人の大天使とトビア」1470年頃 テンペラ・板 135 x 154 cm ウフィツィ美術館 フィレンツェ BOTTICINI, Francesco The Three Archangels with Tobias c. 1470 Tempera
on wood, 135 x 154 cm Galleria degli Uffizi, Florence
ベルナルド・スロッツィ「トビトの癒し」1635年 158 x 223.5 cm エルミタージュ美術館 サンクトペテルブルグ STROZZI, Bernardo The Healing of Tobit c. 1635 Oil on canvas, 158 x 224
cm The Hermitage, St. Petersburg
レンブラント「トビア家を去る大天使」1637年 油彩・板 266 x 52 cm ルーヴル美術館 パリ REMBRANDT Harmenszoon van Rijn The Archangel Leaving the Family of Tobias 1637 Oil on wood, 68 x 52 cm Musée du Louvre, Paris
聖書では一般的に犬の動物としての評価は低いですが、トビト記では犬は大事な旅の友として登場します。。