今日、お試し読みで面白いなと感じてその日に買ってみました。




絵面が辛気臭そうですが、中身は面白い。この人は先生で、進路相談の時にひたすら現実を突きつけます。生徒はそれを否定と捉えますが、実は否定も肯定もしていません。夢は人を殺しかねないーーーそんな強いフレーズに、物語は沿っていきます。最後のは途中なので割愛しますが、partは2つ。



1つは声優を目指す女の子。優等生タイプで、ひたすら真面目に声優を目指します。この先生、この娘に『数字の現実』を突き詰め、さらに『汚い現実』をも伝え、いかに大変なのかを伝えます。女の子は卒業後に声優を目指し、専門学校に入り一生懸命スケジュールをこなします。ですが、言われていた『汚い現実』に直面してしまい、だんだん落ちぶれていきます。



2つは電車の運転手を目指す男の子。周りとの協調性がありませんが、電車への熱意は本物。高校を卒業して直ぐに就活。親との波長の都合もあり、受けるのは大手ばかり。先生はどちらかと言うと、彼の作品も鑑みて地方を勧めますが、この男の子、ひろゆきばりに論破しようとばかりして結局大手に。第一志望は落ちますが、第二志望に就職します。ですが、『よくある事』に直面してしまい、運転が出来なくなってしまいます。



2人とも共通しているのは一旦は夢を叶える事です。そこには具体的な努力がありーーーそして挫折します。その様相がとてもリアルで、なぜならこの作者さん、妄想ではなくしっかり文献を読み込んでいるからです。声優の事については、自分が知ってる声優さんってこんな本を出してたんだって気付きました。話数がそこまでなく、ボリュームもあまり感じませんでしたが、それでも心に染みるものがあり、その少なさはしっかりと掘り下げているからこそ、シャープになってるものからきていると思います。ただ、鬱屈に終わるのではなく先生は生徒のその後も気にかけ、女の子のやった役は把握してるし、男の子の職場にもひょっこり現れます。なので話としては高校の時、それから5年後を往復します。この2人には救いがあります。それは1巻だから、この2人は正の人間だから。かもしれません。


文献を読んでいる分、とても具体的です。夢という提示に対して、先生とそして降りかかる厄災で現実という解答が返ってきます。そして現実を突きつけられてそこからどうするのか?というのがこの漫画の面白いポイントです。最後はキャリアウーマンの教頭と先生が対峙します。『現実』という否定的だけど実は優しさのある先生、対して教頭は生徒の夢を阻害するような事をしてはならないと。ただこの教頭、頭お花畑タイプではなく最終ページで奪ってはいけませんよ……希望も『絶望』もと発言している事から、只者ではないと思いました。


ここまで見てくださりありがとうございました。


子供の居ない自分が言うのもなんですが、お子さんが居る方にこそ読んでもらえればなと。


気になった方はぜひ手に取ってもらえればと。