「それでは、志望校の変更もやむを得ないという方針でよろしいんでしょうか」
担任は、息子と私の顔を半々に見ながら言った。
「すべて本人に任せます。ただ、自分を誤魔化して意にそまない大学へ行きましても。モチベーションが下がって、続かないのではと考えます。残念な結果に終わりましたら、親としては浪人させることにやぶさかではありません。せめてもの罪ほろびしに、退路をつくってあげたいと思っております」
「なるほど。小谷野君は、どう考えているのかな」
「僕は、志望校に受かることしか考えていません。ランクを下げることも浪人も、今考えることじゃないと思うんです。まだ時間もあるし、やれるだけやります。うかることしか考えないようにしているんです」
息子の発言に、うっすらと可能性の光が射してくるような気がした。息子は、明確に合格だけをイメージしているのだった。
(親がこの年をさらして、これだけの代償を払ってやっとたどり着いたイメージ戦略をm、とっくに実践しているなんて脱帽だわ。ショー君、あなたはとっくに親を超えていたのね。嬉し恥ずかしだわ)。
ちらっと息子の横顔を見た。まぶしかった。腕組をして聞いていた担任が、ややあって口を開いた。
「お母さん」
「はい」
「小谷野君の成績は、ジワジワと上がってきています。珍しいんですよ。この段階までくると、勉強してもかえって下がることも多いんです。そう考えると、確かにまだ偏差値の開きはありますが、私は不可能ではないと考えます。そうだよな、小谷野」
「はい。これまでロクに勉強していませんから、その分、疲れがなくて、かえって踏ん張れるんです」
「あはは。よく自分がわかっているじゃないか。じゃあ、このままでいいんだね」
「はい。そうしてください」
「よし、わかった。逆転ホームランを打ってみろよ。期待しているぞ」
「はい」
息子は、毅然と答えた。