3.5次元の不倫 -8ページ目

3.5次元の不倫

この本は恋愛と人生についての小説ですが、
ひきつづき児童書(英語の対訳付)を書きました。
おたのしみに!

「そうだろうね。地方の親は大変だよね。入学金にアパート代に家財道具。入学と就職が一緒になったような騒ぎだよね。小谷野さんの報奨金でまかなえたのかい?」

「とんでもない。仕事欲しさに工事費をかなり安く提案したみたいですし、不況下ということで報奨金の率も下げられてしまったんです。これじゃとても足りないということで、年金を担保に借り入れをしました。後は、身内からのお祝金で、まさにギリギリ、本当に綱渡りでした。思い出しただけでも、冷や汗が出ます」

「そうかい。しかし、親にとっては残酷な話だね。息子がそばにいなくなった上に、身ぐるみ剥がれてさ」

「身ぐるみ剥がれるのは、今に始まったことじゃありませんから」

「あはは。こりゃ、いいや。でも、どうだい。少しは寂しさに慣れたかい」

「はい、なんとか。一度、息子がいなくなった部屋で思い切り泣いたんです。もっと一緒にいたかった。もっと一杯遊びたかったって叫びながら…。泣くだけ泣いたら、大分スッキリしました」

「わかるよ。ああ、せつない」

御方様は、声をつまらせた。

「それからしばらくして、博士のお姉さんから手紙をもらって、博士の死を知ったわけです。泣いてなんかいられないって思いました。生かされている以上、自分の使命をちゃんと果たさなければ申し訳ない。息子も独立させたし、一区切りつけるためにも、どうしても御方様にお会いしたくなったんです。長々と苦労話をさせていただきました。おつき合いしていただいて、本当にありがとうございました」

深く、頭を下げた。