「お金を下さいみたいな夢、二度と見たくなんかないわ。本当に何とかしなくちゃ」
「すぐに何とかできたらこんなに苦しんでいないよ。週刊誌の記事に踊らされてアイディア商品を考えてみたりもしたけど、ダメダ、コリャアみたいなものしか浮かばなかったしなあ…」
「でも、今のところ他に活路は見つからないんだから、もう一度初心に戻って考えてみましょうよ。だって、そこいら辺の主婦が大成功しているのよ。私たちにだって、脈がないとは限らないでしょう」
「山の彼方の空遠くだね」
「えっ」
「我々の場合は、川の彼方の空遠くだけどね。川の向こうに幸せがあると信じて矢切の渡しを渡って、今また山を越えようとしている。山の彼方のなお遠く、幸い住むと人の言うだよ」
「ショー君を育てるためには、どんな山でも何度でも登らなくちゃならないわ。いみじくも貴方が前に歌を作ったじゃないの。ここまでと 覚悟の夜は幾度か 再起はいつも吾が子の笑顔 ってね」
「そんなことがあったね。でも、その通りだよ。今月だって、露木さんの弟さんがくれたDMの仕事でつないでいる有様なんだから、急がないと本当に危ない」
「明日の夜はまたサンの小屋よ。この週末は、何かが起こりそうな気がしているんだけど」
「そうだといいね」