ユートピア三・五。素晴らしいですね。あっぱれな発想です。息子を手離し、気がおかしくなりそうだったあの時、どこかに逃げ込みたいと痛切に思いました。しかし、そんな隠れ家はありませんでした。親の手前、病院に逃げ込むわけにもいかず、身の置き所もなく、今でいう、引きこもり状態となったのです。自殺者と鬱病が増えるばかりのこのご時世、ユートピア三・五は、まさにゴッドビジネス、必ず天が味方してくれますよ。太鼓判を押します。もちろん長生きをさせてもらうつもりですが、八十歳を過ぎた身ですから、この場を借りて、人生のたたみ支度をさせてもらいたいと考えます。左記の件、よろしくお願いします。一 桂木千枝亡き後の処理一切を、小谷野吾朗・卯月夫妻に委任する。なお、葬儀の類は、行わない。一 土地、家屋は売却する。多少の預貯金を含め、そのすべてをユートピア三・五の運営費に寄付をする。一 著作物に印税が生じた場合、その権利も委譲する。以上 こんなところです。ご面倒をかけますが、よろしくお願します。遺せる相手がいることの幸せをかみしめています。ありがとう。いずれ、また。 --これで、安心して仕事ができる--ふーっとため息をついた。文箱から買い求めてあった原稿用紙を出して、広げた。(ウーちゃん、こっちも負けてないからね。折しも今日は大安だ。ゲンがいいね)。ペンを走らせた。 『兜のよだれかけ--君を生んだ訳--』 桂木おでん著 「おでん、文壇デビューだね」横で寝そべっているおでんに話しかけた。おでんは、眠ったまま、お義理のように尻尾をふった。 (完)
月日の経過は光陰矢の如し、本書の連載も今回が最終回となりました。ご高覧いただきまして厚く御礼申しあげます。皆さまのご健康とご活躍を祈念させていただき、筆をおきます。