「お礼を言うのはこっちのほうだよ。会社をやめて、姉を看取ってからは、ただ命を長らえているだけの歳月だったんだよ。でも、この二日間で、自分の生命力が蘇生したような気がするんだよ。ウーちゃんの経験した人生を借りて、この年をして大きな社会勉強をしたとも思っている。はるかに若い博士が亡くなって、自分はまだ生きている。漫然としていちゃ申し訳ないよね。伊達っていう保険のおばさんが言った通りだよ。漫然としていては、シンデレラにはなれないってね。もっとも、なれたとしても、ばばあのシンデレラだけどね」
「それは、お互い様です。肉体はどうあれ、今世での自分の役回りをしっかりと果たさなければなりませんね。あるべき世界に自分を置く、それがシンデレラだと思うんです」
「あるべき世界に自分を置くことがシンデレラ、か…。なるほど、その通りだね。さすが苦労人だ、うまいことを言うよ。ここまで生きてきて、ウーちゃんが、今一番誇れることは、なんだい?」
「小谷野と息子を愛し抜いたこと、三人ともに健やかに生きていること、自分をひたすら信じて愛することですかね。特に、小谷野との関係では、現世的に底辺まで落とされたにもかかわらず、相手に対する畏敬の念を忘れなかったことです。断崖絶壁まで追い込まれて、インナーチャイルドのセッションを受けて、強く自分を信じること、マイナスの過去を払拭すること、プラスのイメージを潜在意識にすりこませることを学びました。小谷野の契約がとれたのも、息子の合格もそのお陰だと信じています」
「そう考えると、インナーチャイルドの先生が言った通りだね。ウーちゃんは、類まれな強運の持ち主なんだよ。というより、類まれなほど、人生に真面目で、優しいんだと思うよ。だから、満塁さよならホームランが打てるんだよ」