第14章 零   落 (2) | 3.5次元の不倫

3.5次元の不倫

この本は恋愛と人生についての小説ですが、
ひきつづき児童書(英語の対訳付)を書きました。
おたのしみに!

幼い頃、晩酌の膳に箸が乗っていないことに腹を立てた父が、悪し様に母をののしったことがあった。一度こうなると、父が母に注ぐ視線は、仇敵に向けるそれであった。母は、涙を見せた。父の箸を取り出すと、シャカ、シャカと力任せに箸をこすり合わせて洗った。機嫌を損ねた父は、料理にほとんど手をつけず、母に敵意を示したまま、酔って、眠ってしまった。愛と平和に見放された夜であった。それ以来、箸を洗う音を生理的に受け付なくなった。自分では、決してこすり合わせて洗うことはしなかった。苦い記憶をまさぐっているうちに、ふと、あることに思いあたり、あっと声をあげそうになった。(たった今、わかったわ。私は、箸とは相性が悪かったのよ。幼い時のトラウマのせいでね。だから、ものの見事に訓練箸は失敗してしまった。そんな物で勝負に出ちゃいけなかったのよ!)。突然の気づきは、この場の霊力によるものかもしれないと考えた。(あなどっちゃいけないわ)。占い師の言葉に、ちゃんと耳を傾けようと改心していると、ようやくにして、彼の手技が止まった。「去年は、あまり良くありませんでしたね」陶酔から醒めた占い師は、こちらの顔を見るともなく見て言った。「平成に入ってから不運続きです。なぜなんでしょうかねぇ…」小谷野は、懸命に自分を押し殺しているようだった。打開策をあせる妻に根負けして、しぶしぶ足を運んだ夫であった。生きる道を人に指南してもらうなど、この場に及んでも男としてのプライドが許さないのは手に取るようにわかった。「お二人は同じ星なんです。だから、悪いも良いも2倍以上ということです。一番気になるのは、名前ですね」名前と言われた途端、<卯月--因幡の白兎—詐欺—丸裸>というフローチャートが頭の中にチカチカと点滅した。「名前の何がいけないんでしょうか?」