「久しぶりだね。」
「そうだね。まずはご飯食べようか。」
「どこで食べる?」
「あそこでいいんじゃない?」

付き合っている二人。
お互い忙しくて、最近二人の時間は取れなかったけど、
会ってしまえば、いつもの二人だ。

いつものようにご飯を食べて、
いつものようにおしゃべりをした。

外に出ると、普段よりちょっと早い時間。
ここのところ降り続いていた雨も、
今日はお休みだ。

「ちょっと、公園でも散歩しない?」
珍しく誘われた。
最近会えなかったら、
少しでも一緒にいたいと思ってくれたのだろうか。
「もちろん、いいよ。」

まだ少しひんやりする。
カエルの声がする。
夏も近い。
もうすぐ花火の季節だ。

「そこのベンチに座って、少し話でもしない?」
「うん、いいよ。」
いつものような雑談。
くだらないこと、ちょっとマジメな話。
その他、いろいろ。いろいろ。

流れ行く時の中、不意に沈黙が訪れる。
お互い、何も言葉も発しない、
何も口にする必要のない瞬間。

しかし、思いもよらない言葉で、その沈黙は破られる。
「ごめん、私、やっぱりあなたのこと、好きじゃない。
 いえ、あなたのことも好きなんだけど、
 それは友達としての好きでしかなかった。
 だから、別れよう。
 別れても、仲の良い友達でいよう。」

思いがけない言葉に動揺する。

「え、どうして突然?」

「他に気になる人がいるの。
 あなたのように優しくしてくれるというわけではないけど、
 いつも私のことを思ってくれるわけではないけども、
 私にとっては大事な存在なの。」
 
「…そう言われても、納得行かないよ。」

「ごめん。でも、もう決めたことなの。」

「…。」

「ごめん。…ごめん」

そうして、二人の関係は終わった。

全く突然のことに思えた。
でも、よく考えてみると、思い当たる節があった。

もともとは、自分が好きだったから、
好きになってもらうように、頑張った。
頑張ったおかげで、付き合うことはできた。
でも、相手は本当の意味で「好き」にはなってくれなかった。
どんなに、どんなに頑張っても、相手はいつも別の方向を向いていた。
そして、ときたま思い出すように、自分と仲良くしてくれた。
いつも一緒にいる存在ではなく、
たまに一緒に遊ぶ友達のような存在。

うすうす、自分はそんな存在だと分かっていた。
でも、頑張っていれば、
いつかは自分のほうに振り向いてもらえるんじゃないかと思ってた。
そう思えたから、頑張れたのに…。

相手にとって、「特別な存在」。
どうやったらなれるのだろうか?

付き合うことになっても、
本当に相手を振り向かせないと、意味がない。
でも付き合っていた時間は何なのだろうか?

結局は、相手の「特別な存在」を気付かせるための、
踏み台に過ぎないのだろうか?
でも、そんなのって悲しすぎるんじゃない?

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「やまとなでしこ」。「恋ノチカラ」。
どちらも、矢田さんが演じる、好きな男性に対して、
健気に頑張る女の子が、本命に敗れて、振られてしまう。
本命への踏み台であるかのように。

「もっといい女になって、もっといい男を見つけてやる」と、
流した涙を次への糧にしようとしているが、
そうとはいっても、振られた相手のことは、本気で好きになっていたわけで…。

上のようなエピソードを読んで、あなたはどう感じますか?
桜子さんと若葉ちゃん。
どっちが欧介さんと結ばれてほしいですか?