今月頭。
長男が金沢に引っ越した。
うちから車で1時間ちょっとの場所。
そんなに遠くもないし、荷物も車に
何とか乗るぐらいの量だったから、
長男と私が二人で運んだ。
引っ越し作業後。
ゴミ出まくり。
全部車に乗せて、私が持ち帰り、
うちの近所で出すことに。
金沢市も今年からゴミが有料化。
しかも、私が住む地域に比べると、
分別が細かい。
ポテチなどのアルミの袋は、
普通の燃えるゴミとは
また別に出さなきゃならないそうで。
まだまだ、きれいに片付いたとは
言えないけれど。
午後4時半を回って
5時に届こうかというところで、
帰宅することに。
小学生組の次男と娘が、
うちで待っている。
黄昏時も終わりに近く、辺りがすっかり
暗くなりかけ、オレンジ色の層が燃え尽きて
地平線から消えそうになった頃。
のと里山海道をひた走っていると、
私の携帯電話に長男から着信が。
「お? どうしたー?」
「母ちゃん。俺やらかした...」
声がかなり暗い。
どうやら本当に
何かやらかしたらしいな。
大将。
「やらかしたって、何を...?」
もし犯罪なら、
庇うわけにはいかない。
自首しろ。
息子。
「俺、財布忘れた...」
「財布? は!? どこに!?」
一体どこに忘れてきたんだ。
このバカ息子は。
もしかして、ランチに行ったお店か...?
「母ちゃんの車の中...」
能登と加賀を繋ぐ、のと里山海道の一部は、
海岸線に沿うように伸びていて、晴れた日には
とても美しい大海原と地平線を期待できる。
夕日の時刻には、車で入って
そのまま走ることができる
千里浜という砂浜の名前がついた
インターチェンジに車の列ができる。
海へと落ちていく夕日が臨める
サービスエリアも、夕暮れ時はとても人気だ。
ふん。
この時間帯は、ほぼ真っ暗で
もう何も見えんわ。
海からの風が轟轟とうるさいだけよ。
挙句に、横風に煽られて
車のハンドル取られて危ないわ。
神経使うわ。怖いわ。
けっ。
おまけに息子は車に
財布を置きっぱなしだとよ。
ああ。ロマンティックやね。
まったくよ!
財布に銀行のカードから
何から全部入っている。
新生活。
一人暮らしの初日から、
所持金ゼロの一文無し。
一体誰の子なんだ。こいつは...
「今から、こっち戻ってこられる...?」
わけないだろ。
すでに海道半分以上、
突っ走ってもうたわ。
すっかり夕日が落ち、私の心模様と
まったく同じ色の空模様の下、
延々と続く海道を悪態をつきながら、
事故らぬように飛ばす。
財布忘れた...?
愉快なサザエさんか、お前は!
よーく考えてみろ。
買い物しようと街まで
出かけたにもかかわらず、
財布を忘れたサザエさんが
本当に愉快かどうか!
大体、どうやって街まで出たんだ。
走って行ったのか。
もし電車に乗ったんだとしたら、
一体どうやって改札を抜けたんだ。
自動改札を飛び越えて
走って逃げたか。
駅員を突き飛ばして
気絶でもさせたか。
タイ子さんと共謀して、
キセル乗車でもしたのか。
それともマスオさんの
定期券でも借りたのか...
もしかして、街って近所の
商店街なのか...?
どこもかしこも全部ツケ払い...?
みんなが笑ってる
当たり前だろ。
誰でも笑うわ。呆れるわ。
ちっとも愉快じゃないわ。
実際、私は怒ったわ。
無性に腹立ったわ。
迷惑を被る人間だから当然だ。
小犬も笑ってる
だとよ。
それでいいのか?
生まれて間もない犬にまで
馬鹿にされてるけど...?
ルルルルルル
何を浮かれている。
今日もいい天気
だから何だ。
天気と財布は関係ない。
次の日。
朝一番で郵便局へ行き、息子の財布を
新居の住所まで送った。
午前中に出せば、県内なら
その日のうちに届けてくれるという。
その日の夜、財布は息子の元へと
ちゃんと戻って行った。
ああ有難い。
財布がなければ、ジュース一本どころか、
うまい棒一本すら買うことができないんだから。
まったく生活できなくなってしまう。
息子には、今後、少額でいいから
部屋のどこかに現金を置いておくように
言っておいたが、どうもあいつは
実行していないんじゃないだろうか。
懲りない生き物だな。
一体誰の子なんだ。あいつは...
この間、久し振りに見たサザエさん。
もし、私がサザエさんの脚本を
書けるとしたら、何を書くだろう...
ふと、こう思った。
しばらく考えた結果...
波平、スキンヘッドにする
ノリスケ、RIZAPの無料カウンセリングに行く
マスオ、ふすま一枚のプライバシーに耐えられなくなる
この3本のうち、波平さんとマスオさんの
心理描写は、特に丁寧に展開したいと思います。
応援してくださってるあなた!
いつもありがとう!!