小説です
ガゼルの風Ⅲ(氷の国へ】⑦
森の薄暗リの中
濃い霧で 前も後ろも右も左もわからない
イーリアは 本当にこれから戦が起こるのだろうか?と疑問に思うほど
辺りは静まり返っていた
隣にいる ルンバが 話しかけてきた
「私 ずっと気になっていたんだけど
あなたの周りで 黒い真珠をしていた人は誰なの?」
伝真珠といわれる
送信機を誰が持っていたのかを気にしてるようだ
「黒い真珠は 母上がしていた・・
白い真珠の2つのうち
一つを兄上の右耳へ
もう一つを私の左耳へ」
そんな話をした瞬間
ルンバが 目を輝かせながら 身体をイーリアに押し付けてきた
「あなたのお母様が生きているなら その伝真珠が 受信しているはずよ!
どこにいらっしゃるのかも わかるわはず!!」
ルンバの言葉は イーリアを想像以上に喜ばせた
「この受信機は どうやってみることができるの?」
声に力が入る
その時
草むらから ユラユラと 発光虫が飛び出した
イーリアとルンバは 息を飲んだ
戦がはじまるといっても
相手は5人と少人数 きっと 静かな闇に紛れてやってくるはず
草むらで動くものがいれば 発光虫が 中に飛ぶように
魔法で発光虫を あちこちに忍ばせておいたのは
策士イーサレエの案だった
イーリアとルンバは南側の監視役
発光虫を目撃したら 敵がいることを知らせる笛を吹いて 退却する予定だった
その時大声で叫ぶ声がした
「誰か 助けてくれーー!マザーツリーが燃えている!」
「自由』の木が燃えている!」
22本のマザーツリーには
本の数と同じだけの固有ののエネルギーがあり 各呼び名がついている
マザーツリーの世話役達が叫んでいる
「もうすぐ隣のマザーツリーにも火が飛び火していくぞーー」
イーリアと ルンバは 足を止めて振り返ると
白い霧がかった中に丘の方面が真っ赤に燃えている
ルンバが
「すぐにマザーツリーの火を消さなければ!」
と イーリアの手をひっぱった
イーリアは 城を振り返り
「12時までに間に合わなくなるわ。この入れ替わりのチャンスは一回きりなんですもの
ルンバ本当にごめんなさい 私は行けない
あなた一人でいってちょうだい」
こんな状況の中で断ることがどれだけ辛いことなのか
イーリアは 泣きそうな表情でルンバにあやまった
ルンバが
「あなたのお母さんのマザーツリーが燃えてしまったら
今にも消えそうな灯火の命が 消えてしまうかもしれないわ」
とイーリアに一緒にマザーツリーの火を消して欲しいと 手を強くにぎり返した
イーリアは 正確な時計がわからず
自分の感覚では
11時を回ったあたりだろうと憶測で判断した
それならば 消火活動をしても間に合うだろう
ルンバに
「今から丘にいっても城に12時までにもどってこれるかしら?」と聞くと
ルンバは 腰に下げていた懐中時計を確認して
「えぇ・・・○☓▲◇・・」
と 一旦足を止めたが
大きく息を吐いた瞬間 イーリアの手をひっぱって走った
二人は走って
燃えている場所にいくと
村々の人たちもかけつけて 消火活動をしていたところだった
そこは 草原にも火がついて 人混みでごった返した火の海だった
イーリアの魔法は
水の移動をする程度 まだまだ未熟なゆえに雨を降らせる力はない
イーリアは即座に機転をきかせて
霧から雨を作り出していく
そして 雨を降らせていく
雨はしばらく降り注いだ
徐々に火は沈下して 21本のマザーツリーは無事だった
村人の歓声を背中に
ホッとする間もなく
ゴーン と
12時の鐘が鳴り響く
イーリアは 驚いた 自分が想像している時間より ずいぶん早い
あっ!と舌打ちした
シダ国は 時間の進みが早いんだ!
私の体内時計と シダ国の時計の針が進む時間が違うんだった
一つ目の鐘が鳴り響いた時 イーリアは この丘から城の奥の部屋まで移動するにも距離が離れ過ぎている
自分の行動に悔いて ボーゼンと立ちすくむことも許されない
「考えろ!考えろ!考えろ・・・・」
イーリアは 足を早めて その場でグルグル歩きだした
「イーリア 考えて!どうしたらいいのか 考えるんだ!」
と ハッと思い出した瞬間 叫んだ
「カッサム!カッサム来て!! 今すぐきて!私のもとにきてちょうだい!」と叫んだ
その瞬間 カッサムが目の前に現れて イーリアはすぐに叫んだ
「アンジオール姫のところへつれていって!今すぐに!」
状況を一瞬で判断したように即座に
真剣な表情のカッサムは イーリアをマントでくるりと右手で覆うと抱き寄せて
「青い鳥のもとへ!」と叫んだ
気づくと 目の前には
城の奥にある 隠し扉の中に入っていた
瞬時に移動してきたのだ
ガラスの棺の中には陰の巫女と言われたサラーサ様が横たわっている
その胸におかれた 青い鳥のアンジオール姫が 眠っている
イーサレエが 慌てている
「イーリア おまえの血が必要なんだ」 人差し指に ナイフをあてて その血をサラーサ様の唇に触れた
その瞬間 かすかに サラーサ様の身体が動いたと思ったら
同時に 身体が 砂化しはじめた・・
陰の巫女が
「残念ながら時間が少し遅すぎたわ 失敗しました」
と静かに話した
陽の巫女が
「すぐに 闇の国の氷山に移して身体を凍らせるのです
このまま凍らせて いつか解凍できるまで待つのです」
イーリアは
「じゃっ!早く 鳥にもどして アンジオール姫を鳥にもどして!」と 叫ぶも
みんな顔を横に振るだけで うつむいている
「咒式を使って一度抜けた身体にはもどれないのよ」
と話すのは 陰の巫女だった
ザワザワとしてる中
イーサレエは サラーサ様の身体に入ったアンジオール姫を 魔法で凍らせた
「ほんの一時 姫を凍らせても 応急処置としかなりませんが・・」
イーサレエは 覚悟が決まったように ハッキリとした力強い口調で
「アンジオール姫と一緒に 時空を超えて 闇の国にいきます」
と 告げた
イーリアは
「まって 兄様 あそこは 氷の国と属にいう闇の国 入った瞬間氷ずけになる
入ることは簡単でも出ることは無理だと言われている場所よ」
と悲鳴に似た声を出す
「一日中 太陽もなく 夜の世界
一面氷の世界で 何もかもが凍っている
罪人の流刑の場所や 悲しみに耐えられない世捨て人のような人が永眠する場所よ!」
話しつづけるイーリアに
イーサレエは 黙って抱きしめた
「自分がやりたいと思ったことをするよ僕は・・・
それが 間違っていても やらないことで後悔するほうが もっと嫌だ」
イーサレエが妹の身体から ゆっくりと離れると
目をみて説得するように 話し出す
「ありがたい事に この棺は時空間を超えていくには都合がいい
僕一人なら なんとか 時空の波に乗って 時空管理局を通さない方法で 闇の国に入ることができる」
イーサレエは黙って
右耳の白い真珠の耳飾りを イーリアに手渡した
「母さま の姿がみえるはずだよ すべてを話すことができずに このまま いなくなることを許してくれ」
と 離れた
そして 静かに皆が見守る中 イーサレエと棺に入ったアンジオール姫は音を立てずに消えていった
一人 また一人と隠れ部屋から 人が去り
イーリアが一人 ポツンと座っている
暗殺者から国を守った英雄たちが城内にもどってきた
シダ国の騎士団やマライ国の戦士の帰還で お祭り騒ぎになっているのが耳に入ってくる
イーリアは椅子に座ったまま 膝を抱え込んで 声を出さずに泣いていた
時々 すすり泣く声を
開いた白いドアにもたれかかった カッサムが 夜空を見ながら聞いていた
つづく
写真は すべてお借りしました
ありがとうございます
オリジナル小説です
真似しないでぇね




