高校生でスーパーマーケットでアルバイトを始めて、お金を貰って働く、「お仕事」というものに触れました。誰かの役に立つこと認められる事、そして作業成果によって自分に自信を持つことが大好物の私はバイト初日からすぐに、教えられた事を一所懸命覚え身につけ働きました。当時その職場には働き者の先輩が多かったけれど、それでも1年もしないうちに一番デキル先輩と比べても遜色ない仕事が出来るよう成長していたと思います。

完全な自己満足であり社員や先輩にそんなこと言ってもらえたことはありませんけどね。

 

ただ私の仕事に社員や先輩の手直しが入ることも、チェックすら入ることもなくなっていったので、阿部はどれだけ早く仕事をこなしても手抜きする奴ではない、っという評価はもらえてたんじゃないかな。

 

一方で私と同時期にそのバイト先に入ったG君という1個上の子がいて、その子は仕事に対する意識が私とは全然違っていました。

バイトは学校から帰ってきて17時から出勤してたんですが、まず最初にすることが当日廃棄する商品に値引きシールを張っていく作業。17時と、客足を見ながら19時過ぎ頃に2回に分けて行っていました。

それの1回目が17時。賞味期限や消費期限をチェックして相応な値引き額のシールを張り付ける、体力も使わない簡単なお仕事。

担当者は決まってないから誰がやってもいいんだけど、私や他の先輩達は出勤したらまず作業部屋に集まり今日どれだけの仕事があるのか、それを何人で完遂させるのかを頭に入れ、退勤の時間を照らし合わせ何時までにどれだけ仕上げないといけないなとかっていう小さな小さな会議を2分程で済ませ、割り当てが比較的楽な人が割引シール貼りしてました。作業員が足りてない日なんかにはゾクゾクしながら働いてましたね。

何かに追われているかのように。ほんとに終わんのかこれー。っと時計を見ながら。

そして他のメンバーの動きを見ながら、俺も負けないぞ、俺が一番早いんだ!っと競うように仕事をこなしていました。

そして見事に終わらせた時なんかには、口には出さなかったけど当日出勤したメンバー同士に絆や信頼という確かな物が出来ていました。

 

「俺たち、、、やりきったな。」みたいな。

 

そんな感じで働いてたもんだから値引きシール作業なんかほんとただの消化作業。空き時間見ながら5分もかけずに売り場全部を巡って張り終えて別の作業に移る。

 

 

ところがG君にとっては違うんですね。これが立派なお仕事のようで。5分はもちろん10分経っても終わらない。ゆうに20分程かけて作業場に戻ってくる。みんなは既に作業に取り掛かってペースをつかみ始めてる時間。高校生時分だから年上に文句言うってのはなかなか私には出来なかったけど、それが余計にイライラしてました。

先輩達もG君におせーよとかサボんなとか言ってくれてたけどG君にはあまり響かず。

おそらく、自分は普通に働いてるのに何を責められているのか理解出来なかったんだろうなー。他の人が5分で終わらせる仕事に20分を費やしていても、何も気にならなかったのでしょう。自分が遅いせいで他のメンバーの負担が増えようが、そんな事気にもならないんでしょうね。ただただマイペースに作業を進めていくだけ。

 

作業効率が悪く仕上がりの遅いG君には自然と簡単な割り当てがされるようになっていきました。その日終わらせなければならない仕事量は決まっているので、G君の担当を増やすわけにはいかないんですよ。

 

そんな文句がありつつも他のメンバーには恵まれ、バイトが部活動でもあるかのように生活の一部となり、その後も辞めたりまた勤めたり、他のバイトと掛け持ちしながらとかで長く長くそのスーパーマーケットにはお世話になるわけですが、そのうちにメンツもどんどん入れ替わり、世代交代ともいうべきか採用担当者がアホすぎるのかバイトのレベルはどんどん低下していき、G君はとっくに辞めていたけど最終的にG君よりも全然使えない人材であふれるようになってしまってましたね。

その頃には私もどんどんと腐っていってしまいました。

 

バイトの時給って簡単に上がらないじゃないですか。そして、上がったとしても10円単位。50円上がるなんて余程の事でもないと上がらない。

たとえ50円上がっても100時間働いて5,000円の差。つまらないですよね。

仕事の成果を比較するのって難しいかもですが、スーパーマーケットとかだとバラで届いた玉ねぎとかジャガイモみたいな商品を2個なり4個なりに袋詰めにする作業とかがあります。ある時私ともう一人のバイト君、二人で同じ袋詰め作業を横並びですることになった時、私とこの子とどれだけ作業ペースが違うんだろうと思って比べたことがありました。

 

結果は、私が100袋完成させた時にもう一人の子は30袋未満。3倍以上の差がありました。

その結果から、単純に私は彼の3倍の時給を貰っても不思議じゃないよね。って思うようになるわけですよ。ただ、この子は特別おっそい子だったんで結果は見えてましたけど、他のバイトや、30年以上働くパートさんと比べても2倍以上のスピードは保持できました。だからせめて2倍は貰ってもおかしくない。

 

もちろん仕上がりも私の方が奇麗でしたよ。30年選手のパートさんとはどっこいかもしれないけどスピードが違うから。

 

しゃべりながらふざけながら、それでも目にも止まらぬスピードで完成品を積み上げてく私を見ても、私が思う程他のバイトメンバーには刺激にならないんですよね。

仕事というか、作業をするということに対する思考がそもそも違うのだ。だから自分の倍のスピードで働いてる人が目の前にいるってことに気づいてもくれない。アルバイトは仕事をする場ではなく、お金を貰う場でしかない。意識が違うんです。

私がいくら働き者であっても時給上げるのが難しいのはわかっているから、代わりに私は腐っていくようになりました。

 

社員にも堂々と断りを入れました。

 「自分の気持ちが収まりつかず納得できないから、自分が手を抜く事にします。」っと。作業ペースを緩め、お客さんの目に触れない作業場ではイヤホンを着け音楽を聴きながら仕事をするようになり、それも当然の権利だと考えてました。腐っちゃったんですよねー。

 

それってのも、その頃ほとんど毎度Oさんという一回り上のフリーターの方と一緒にシフト入ってたんですが、この人はG君どころじゃない。G君はサボってる気持ちがなく単に作業が遅いだけだったけど、Oさんは意識的に時間を潰すタイプのサボり屋だったんですよね。

それこそ、5分で終わる仕事を20分、それもタバコ吸いながらきっちりサボってる。その間も私は手を止めず仕事を探し続け働くわけですよ。20分どころか何分経とうが、社員が次の仕事を指示しに来るまでなーんもせずに雲を見上げていたりする。。。。幸せな人だなー。

 

そんな人と時給一緒。バイトってのは何をしようとしなかろうと、同じ時間そこに滞在さえすれば同じ給料ですからねぇ。耐えれないですよ。それゆえに私も行動を取ったわけですが、意図的に作業を遅くするって、、、これまた逆にストレスでしかない。

しかし不憫に思ったのか面倒くさくて放置されたのか、暴走してく私に社員も、店長すら何も言いませんでした。

 

働く気のない人、作業効率やペースの違う人、一緒に働きたくない。

就業時間中なのに指示されないと動かないやつ、同じ空間で働いてる人間の作業ペースが見えてないやつ、一緒に働きたくない。

 

会社でもそうだろうけど、ある程度の人数で1つの仕事を細分化して振り分けて、そしてやり遂げるわけじゃないですか。

ある人は1人で全体の20%こなしているのに、ある人達は5人で20%もこなせないような状況もある。

しかし会社や上司はこれを正当に評価しない。むしろ仕事が出来過ぎる人材を邪魔がるようにもなったりするんです。何故なら自分達より仕事出来る人材をコントロールする能力が無いから。会社や上司が人材を評価してあげる簡単な方法って給料の額でしかないのに、それをちゃんとしない会社が多すぎるから、いい人材って会社ってものに留まらず出て行ってしまい、大した才能も仕事もしない社長や古株が自分が一番仕事が出来る人間なんだと勘違いしてのさばってる事が多い。

 

振り返って考えてみればアルバイトを始める以前、小学校や中学校の班行動なりクラスの係活動だとか掃除の時間とかもだけど、お金が発生しようとしなかろうとG君のようにとろかった人、O君のようにずる賢くサボる人ってのはいたわけだ。

そして現在みな、どっかで何かして働いていると思う。Oさんはもしかしたら働いてすらいないかもしれないけど。雇い主がいなくて。

 

G君を除いた、私が働き始めた当初の働き者達しかいなかった時は自分の働きに疑問を持ったり、ましてや時給に不満を感じた事など一度もなかったのに、働く感覚が自分とはズレている人が増えていくに連れ、そんな人間と一緒に働くことでストレス爆発を起こしそうな日々でした。

 

辞めたりまた勤めたりで実質は7年ちょっとだけど、総じて10年も関わった職場なのに、辞める時主任に「人が足らないからいついつまで出てくれない?」とのお願いに対し、「その願いを聞いてあげるような恩を受けてません。」と冷たく私が言い切ったので主任もそれ以上言うこともなく、「分かった。」で話は終わりました。

 

ほんと問題児ですね。

 

 

さて、そしてここまでは前置きの話でここからタイトルに触れるわけだけど、「made in japan」と聞くと世界的にも一定の信頼があって、作りがしっかりしていてそれだけで品質を保証されているような気にもなるじゃないですか。そしてこの言葉は真面目な日本の職人が丹精込めて作り上げた、みたいな意味合いも含まれていると思うんです。

 

今私はたまに瓦屋で屋根仕事を手伝っているわけですが、手伝っていると毎度毎度「made in japan」について思う所が出てきます。

今の所私が手伝いに行った現場には新築物件はなく、瓦を現代風の屋根に葺き替えたりだとか、雨漏りの修理依頼の現場なんかに行っています。なので、ある程度築年数の経った物件を見ています。今現在は建築の現場に外国人が増えてきてはいますが、20年前はそうでもなかったでしょう。だからある意味日本人が日本で作った「made in japan」な物件なんですよ。

 

ところが、G君やO君のように働くのが苦手なのかやる気がないのかって人はどこの職場にもいますよね。これを読んでる人も自分の職場に置き換えると必ずG君やO君に当てはまる人が存在するんじゃないでしょうか。

もちろん建築の現場にもいるんでしょうね。彼らみたいな人が作業に加わらなければ今この物件は雨漏りなんかに悩まされていなかったんだろうなーって、屋根仕事しながら考えます。

 

屋根なんてのはいってみればほんとに単純な構造してますよ。屋根の形を作る野地板の上に防水シートを敷いていき、そこに瓦が乗るように木材を並べ、瓦を並べていくだけ。

 

そうなんだけど、この単純な工程の中にも使う道具や材料、細かい違いが生まれます。例えば瓦を留める為のビスにゴムパッキンをかますかかまさないか。それだけで10年後20年後、そこからの浸水で屋根板が腐るか腐らないかが変わってくる。

 

この家を建てた時に自分の仕事に誇りと責任を持つ人材だけが揃っていたのなら、もしかしたら天災でもない限りこの家が役目を終えて取り壊す段階になるまで、屋根の修理が必要になるなんてことはなかったんじゃなかろうか。素人ながらに今まで参加した家々を見て感じます。

 

そうなると、今自分が住んでる家って大丈夫なのかなって思いますよね。G君やO君は絶対どこにでも紛れているんですから。

手抜き工事だとか違法建築だとか、、、ニュースで見ると特別な事のように考えていたけど、細かい視点で見たら手抜き作業なんていくらでも行われてて、そしてそれが家の補修工事が必要になってしまう多くの原因なんだろなと思います。G君やO君の問題だけじゃなく、現場を仕切ってる一番上の人間が材料費を抑えたりすることも大きな原因ですが、その人もその人でGやOとはまた違うタイプの、仕事に対する責任感の無い人ですね。

 

けれど、どこの職場にも当たり前のようにいるってことで、これはもう複数で行う作業では避けることの出来ない人災なんだろうなとは思います。

 

そこで私自身の今の職業に翻って当てはめる。鍼の方ねもちろん。

 

鍼灸師、紛れもない職人ですよ。日本人が行う作業、これも「made in japan」の意味を成すはず。

サボる事なくずる賢くなる事なく、ただ一所懸命に自分の仕事をこなす。「made in japan」の名に恥じない技術を保っていこうと思います。

 

ちなみに、私が手伝ってる瓦屋君も紛れもなく「made in japan」な仕事をするやつです。屋根の上でも私と一緒にバカなこと言いながらふざけながら、それでも一切の妥協なくしっかりと数十年後のその家の屋根の未来を見据えた仕事をしているなーと、その働きぶりが語っています。

だからこそ私も、瓦屋君に少しでも認められるように手伝いとはいえせっせと働きます。どんな仕事であっても一所懸命働く人間の下で働くのは、本当に楽しい。

 

あと、言っておかないとならないのがG君もOさんも何をやらせてもダメってわけではないとは思う。
人にはそれぞれ適正ってものがあるから。もしスーパーでやっていたような単純作業だったり肉体労働と呼べるような仕事を今もしているようだったら、そこでも彼らは使えない、周りに迷惑をかける人員なんだろうけど、自分の適性に合った楽しいと思える仕事が見つかっていたら、逆に私みたいな肉体労働者をこき使う立場になり花開いていてもおかしくはない。
やりたい事、やれる事を見つけるってほんとに難しいけど、やってみないとわからないんだから色んな仕事に就いてみるしかないんですよね。
 
もし自分に高校生になる子供がいたら、一年区切りくらいで色んな職場に勤めてみたら?っとアドバイスをしたいなーと思いますよ。

 

最後に、関係ないけど最近心の中でヒットした手作りマスク。文字入りはエモい。これも「made in japan」