旅が愉しかった。

旅から帰った翌日、1日だけホームシックならぬトラベルシックに堕ちた。正しくはトリップシックかしら?
 
夜に早速ご趣味のソフトバレーにも出掛けたんだけど、プレイ直前まではソフバなんかやってもな~。って、趣味に対してまで消極的になるくらい、旅の余韻に浸っていたかった。
まぁ、ソフバ始まったらやっぱりそれはそれで楽しかったんだけどさ。阿部の割には珍しくいいスパイクいくつか打てたから。
 
旅の内容は宿に泊まって帰ってくるだけ、それ以外何もしなかった旅。縁あっていい宿に泊まらせてもらう事が出来て、自分の事も他の誰かの事も何も気にせず、ご飯の時間まで自由に過ごし、食べたらまた自由に過ごし、寝る時間が来たら寝るだけ。
物を考える時間に充てるつもりでいたのに、それすら何もせずただただ至福の時間をぐでぐでと過ごし、溶けるような1泊だった。
 
鍼の道に進んでから15年近く経つ。。。学び働き続けたその間、会社員や学生が陥るブルーマンデー現象に堕ちたことはない。
 
「明日っからまた仕事かー、めんどくさいな~、働きたくないな~」
 
ってやつ。
 
仕事始めてから1度だけ6連休の正月休みを取ったことがある。私にとっては最長の長期休暇。その時ですら。むしろ早く働きたいなぁくらいの勢い。休み明けから自然と仕事に入れる。
 
もちろん気持ちややる気の浮き沈みはあるから、たまーーーーに、「あれ?俺今日仕事したくないぞ?なんだこの気持ち。。。重い、重すぎる。」ってなることくらいは何度か。
 
でも、朝イチのお客さんが来たら無理矢理にでもそんなの吹き飛んで、忘れる。なんならそのお客さんに「実は今鬱になりかけてたんですよー。たまにはそんなことありますよねー?なったことありますー?」とか、自分の話をぶち当てといて聞く側に回っちゃったりしてる間に自分の悩みなんか忘れてる。会話、対話の出来る仕事の特権かもしれない。

 

だがしかし、今回は堕ちた。トリップシック。愉しい旅の中にいたい。

 

今までの旅行は、旅行先で「あー、今死んでいいなー、幸せの中で死にたいな~」って考えたけど、今回は「もう1日ここにいたいな~」とか、「またここに来たいな~」って、そんな気持ちになった。
前者の方が幸せそうで後者は普通の旅の感想っぽいんだけど、前者は諦めなんですよ。これ以上の幸せはもうない、だから今死にたい。みたいな。
でも後者はこの幸せをまた味わいたい、まだ死ねない!
って、欲張りになってしまうくらい幸せを感じたんですよね。
 
まさかこんな気持ちになるとは思わなかった。旅に出なかったこの3年半、自分は満ち足りてるものだと、自分に言い聞かせて思い込んでいただけだったんだと気づかされた。
抑圧されてた、したいことが出来ていなかったのかもしれない。自分はこれでいい、今のままで充分幸せなんだよ、仕事もあって趣味もあって、公私共に晴れ晴れ。
 
やっぱりそんなのはりぼてだったか。
知ってはいたけど気づかないふりしてた。強がりも度が過ぎたか。箱根の湯が心の全てを洗いざらい流し、さらけ出されてしまった。
 
自分に求められる自分像、他人に求められてる自分像。そんなものに無意味に意識させられ、虚像を造り上げてしまっていたかなーと、反省した。
例えば風邪ひいてるのにひいてないふりするとかさ。
もう強がるのやめようと思う。1人でやってきた、1人でやり過ぎてきてしまったのか。だから強くないといけなくて、なんでも出来ないといけなくて、人には頼れなくて、頼りたくもなくて。
だからこそ、自分くらいは充電しなきゃいけなかったんだなぁって、休暇は必要なんだなぁって。気づかされた。
 
欲してたことに蓋しちゃってたかな。インドアにも程があったみたい。私もたまには外に出たい人間なのだなということを確信。
世間様にとってはなんでもない、むしろたった一泊二日の短い旅。そんなものが千金に値する程尊く感じてしまったのは、ちょっと危険信号だったかもしれないなぁ。なんて事を思った。
 
とはいえー、旅行明けの火曜はそんな気持ちでいたけど、水曜を普通に過ごし、木曜になった今では朝の通勤徒歩30分ですら、すれ違う人を観察したり、有酸素運動頑張ってるよって中山きんに君に脳内で語り掛けたりするのもなんだか楽しくて、結局いつものなんでもない日常は日常で、それも楽しんで過ごしている自分がいる。ただ、変化の無さすぎる日常には飽きてしまったんだね。それに気づいてしまったんだね。
 
いーーーや、実はそれはこの旅に行くずっと前からほんとは気づいていた。だから私は今の環境を変える事を、旅の前にすっぱりと決意していた。確信を得る為に旅行に行ったと言っても過言ではない。
 
近いうちに書きますが、今の場所での鍼屋伍一六は、あと半年足らずで無くなります。留まるのか進むのかも、どこに向かうかをまだ自分でも決めきれていません。年が明けたら、詰めます。