STEP.1​本治法

虚喘と実喘がありますが、鍼灸臨床で遭遇するそのほとんどが実喘です。

肺実を上手にさばくと癒えていきます。

左適応側の肝虚肺実証で本治法をします。古方に曰く麻杏甘石湯證。

先ず、気を引き下げる側の左足の肝経を補います。

次いで、必要に応じて母経の左足の腎経を補ったり補わなかったり。

次いで、相剋経は、気を押し下げる側の右の肺経を切経して最も邪気実が客している要穴(高頻度で尺沢です)を、脉状に応じた手技手法で瀉法します。

次いで、陽経の虚実を弁え、必要に応じて補瀉します。外感病(傷寒・中風・温病)であっても雑病であっても、胃経に邪気実が浮いてくることが多く、やはり脉状に応じた手技手法で瀉法します。

以上が本治法です。

​時に左適応側の脾虚証があります。古方に曰く麥門冬湯證。



STEP.2​補助療法

奇経治療

八脉の任脉と宮脇スーパー4の足陽明脉

任脉の変法で右孔最ー左照海左陥谷ー右合谷に、主穴に5壮(無熱灸なら20壮)、従穴に3壮(無熱灸なら12壮)知熱灸。施灸後に金銀粒を貼付。

麻杏甘石湯や桂枝加厚朴杏子湯や麥門冬湯などと似た効果があります。

STEP.3​標治法

大椎と風門に知熱灸7壮ずつ。

無熱灸なら28壮ずつ。

総合感冒薬と考えてください。

STEP.4​セルフケア

奇経に金銀粒を貼付し、その上から主穴に25壮、従穴に15壮ドライヤー灸。

大椎と風門にドライヤー灸35壮ずつ。

​虚喘と実喘

咳と喘(呼吸困難)と哮(ゼイゼイヒューヒューゴロゴロ)が複合的に現れるのが喘息(喘促)です。

呼吸器の病変ですから、肺の変動です。

虚実があります。

鍼灸臨床で遭遇するそのほとんどが実証です。

これを実喘とします。

一見症状は激しいですが、肺実を巧みに処理できれば案外に癒えていきやすいです。


一方、短気や少気が伴う喘証は、肺の機能そのものがやられているので、予後が思わしくなく、時に命が脅かされる場合もあります。

これが虚喘です。

各証の気虚や陽虚の証で本治法をします。


何でもそうですが、要らんもんを取る治療より、無いもんを補充しなければならない治療の方が遥かに難しいということです。

上記の​咳の漢方薬の證


桂枝加厚朴杏子湯の證(証)は?

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風邪などにて発熱し汗少し出で悪寒あり、頭痛などあり脉が浮で弱くゼェゼェと喘して息早き者、あるいは胸腹など張る者、本方は喘息持ちが風邪など引いた場合に宜し。


麻黃杏仁甘艸石膏湯の證(証)は?

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大した熱が無く汗が出て喘する者、たいして熱が無いとは発熱が無いということで芯に熱がないというにはあらず、喘とはゼィゼィと息に音のあるものをいう。
本方は広く喘息薬または風邪の解熱後咳激しく出で止まざる者に用いて効あり、但しその際汗の出ているということが目の付け所なり。


麥門冬湯の證(証)は?

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咳が出て甚だ込み上げ止まざる者、咽喉痛む者、咽喉の通り悪しくイライラとして咳出で始むる者。
病後などにて他に別に原因なくして熱出で癒えざる者、但しこの場合食欲なき者は柴胡などの之く所多し。
又咽喉イライラとして咳出で止まざる者に半夏厚朴湯の證あり。
但半夏厚朴の證の場合には咽喉のイライラ絶えず付き纏う者多し。


「新古方藥嚢」荒木性次 著 より