「人生の意味の心理学」

著者)アルフレッド・アドラー

訳)岸見 一郎


我々の仲間の人間への関心は
家庭と学校で教えられる
学校は家族の伸ばされた手である
もしも親が
子供たちの訓練を引き受け
子供たちを人生の課題を
解決するために十分に
適応させることができれば
学校教育の必要はないだろう
しかし我々の現代の文化は
より複雑な要求を課す
親の仕事を軽減し継続するためには
学校が必要であり
社会生活は家庭で与えることが
できるよりも高度な教育を
社会の成員に要求する
文化という共通の仕事の中で
対等で自立し
そして責任のある協力者である
仲間を必要としている
それを訓練する場所が学校である
学校は政府の理想に一致するよう
設立されてきた
しかし労働者階級が強くなり
人間文化全体を共有し
それに貢献するために育つことが
普遍的な教育の理想となった
(第七章 学校の影響より)

教師の課題は
子供たちの困難に気づき
親の誤りを正すことです
そして子供の学習への関心を喚起して
子供の成長を評価することです
そのためには
各子供の家庭背景すなわち
ライフスタイルを理解し
個人のタイプを認識して
それに沿った指導が必要になります
たとえば学習が遅れている子供の場合
生まれつきの知能が低いのか
それとも怠惰なだけなのか
家庭環境による問題があるのか
それぞれ異なったパターンがあります
子供の背景を理解し
それに沿った形の学習方法を
教師が子供たちに与える必要があります

また性差による成長速度も
考慮する必要があります
16歳までは
少女のほうが少年よりも
成長が早いということです
これを少年が理解していなければ
少年は少女に追い越されたと思い
勇気をくじかれることになります
共学によってその問題を
理解している教師は
それによって多くのことを
成し遂げることができますが
それを完全に認め関心を
もっていなければ失敗するだろうと
アドラーは言及しています

また飛び級をするくらいの
優秀な子供が必ずしも
有利であるとは限らないとも
アドラーは言っています
期待以上の重荷を
背負うことになるからです
それよりも
クラス全体で考えた場合
このような優秀な子供は
他の子供たちへの刺激となり
クラス全体の進歩が加速され
高められます
むしろ並外れて賢い生徒には
普通の仕事に加えて
たとえば絵を描くような
他の活動と関心が与えられることを
勧めたいとアドラーは言います
これらの活動によって
優秀な生徒が成功することは
他の子供たちの関心を広げ
クラス全体を前進させます

クラスの統一と協力を
増すために有効な提案として
子供たちにクラスの自治を
まかせることであると
アドラーは言います
しかしこの試みは
教師の指導のもとで
注意深く行わなければならないと
指摘しています 
自治を一種のゲームとみなす
危険があるからです
最初は教師が見守り
助言するようにします
子供たちによるクラスの自治は
子供たちに他者と協力して
自分たちで問題解決への
よりよい方法をみんなで
考える機会を与えてくれます

学校の影響において
教師の役割は大きく
子供たちと一緒に勉強し
遊ぶ教師ほど
子供たちの心を
理解できる人はいないのです
子供たち一人一人に寄り添い
関係を確立させることができれば
教師は親と同様に
子供のそして人類の明るい未来を
守り育てる者になりうるのです

学校は社会に出る前に
「共同体感覚」を訓練する
最高の場所です
どうか恐れず子供たちには
この場所でいろんな経験を
してほしいと思います
子供一人一人の良き指導者であり
よき理解者であるべき
教師の役割を
もう一度確認していただきたいと思います
そして教育に携わる
全ての人たちに私たち親と共に
子供たちを明るい未来へと
導いてほしいと願っています

つづく

※アドラー心理学の入門書として

他者貢献による協力や教育や

家族のあり方や結婚の意味など

人生の意味づけ(ライフスタイル)を

理解することで壁を乗り越える勇気を

もつことができる思考が

わかりやすい言葉で書かれています。


↓ぜひ拝読していただきたい一冊です。

 よろしければどうぞ