前回に続き、鹿肉についてお話をしていきたいと思います。
今回は、あまり表に出てこない鹿肉のデメリットについて書いていきたいと思います。
しかし、鹿肉はメリットの方が多い食材です。
そのデメリットを打ち消す方法を知るということが今回の投稿で一番お伝えしたい内容になります。
鹿肉のデメリットを知っておくということは、鹿肉を与える上でもかなり重要なことになります。
デメリットを回避するための方法も存在しますので、まずは鹿肉について知るということが大切だと思います。
もう一度、鹿肉についての栄養価について考えていきたいと思います。
下の表は、寺島健彦, 静岡県(伊豆市)に生息する鹿肉の成分分析, 健康プロデュース雑誌(浜松大学), No.5, 93-97 (2011)によるものです。
この表をご覧いただくと、鹿肉は低カロリー、高タンパク、低脂質ということがわかります。また、リン、鉄分も豊富に含まれるということもわかります。
しかし、ここで重要なことが隠されています。
リンの過剰摂取は腎臓病を悪化させる可能性があるということです。
なぜリンの過剰摂取が腎臓にとってよくないのか?
まずは腎臓の働きについて書いていきます。
腎臓はリンの排泄と再吸収を行い、体内のリン酸量を一定に保つように働きます。
通常、健康な体では吸収したリンの量と同じ量のリンが腎臓から尿に排泄されます。
しかし、腎臓の機能が低下すると、不要なリンを尿中に排泄することができず、血液中にリンが蓄積されていきます。
リンの過剰摂取が腎臓病を引き起こすのではなく、弱った腎臓では、その働きが正常に行われなくなることになり腎臓病が悪化するということです。
腎臓病ではタンパク質の摂取制限がかかることがありますが、正確にはタンパク質に含まれるリンの摂取量を制限するというのが正しく、タンパク質の摂取制限を行うことで、タンパク質が本来持つ働きを失くしてしまう可能性があります。
タンパク質は、筋肉、臓器、血液、皮膚、髪、歯、爪など体のあらゆる組織をつくる材料になる栄養素です。
さらに、体の機能を調整するホルモンや酵素、抗体、神経伝達物質などの材料でもあり、免疫や代謝、血圧の調整、神経機能の維持などにも重要な役割を果たしている重要な栄養素になります。
これを腎臓病だからといってタンパク質の摂取制限を行うと、体をつくる大部分に栄養不足が生じ、体内のバランスが崩れ、さらに症状が悪化すると考えられます。
ですので、腎臓病の子にはタンパク質の過剰な制限ではなく、タンパク質に含まれるリンの含有量が少ない食事に切り替えるのが良いと考えます。
植物性のタンパク質だけでなく動物性のタンパク質の摂取も必要なのですが、動物性タンパク質を摂取する場合は、脂身の多い部分(豚もも、鶏の手羽など)を使用することでリンの少ない良質なタンパク質を得ることができます。
では、リンを摂取しない方が良いかというとそうではありません。
リンは骨や歯の形成するのに必要な物質になります。また、細胞がエネルギーをつくるのに使う物質や、細胞膜、DNA(デオキシリボ核酸)など、いくつかの重要な物質の構成要素でもあります。
すなわち、リンを全く摂取しないというのも良くないということです。リンの摂取が少なすぎると低リン血症という病気になります。筋力低下や食欲低下、意識の昏睡、命の危険があるなど、生命の維持に関わることがあります。
では、どうすれば良いのか?
リンを摂取する時に気をつけるべきことは、カルシウムの摂取になります。カルシウムとリンの配合比が整うとある程度腎臓病になるリスクが減らせることが今までの経験からわかっております。
犬の場合
リン:カルシウム=1:1〜2
猫の場合
リン:カルシウム=1:1.2〜1.5
ハリネズミの場合
リン:カルシウム=1:1.2〜1.5
になります。