ジェーン・カンピオンという女性監督を知っているでしょうか。「ピアノレッスン」でカンヌ映画祭のパルムドールをはじめとして、アカデミー賞助演女優賞、脚本賞などを受賞した監督さんです。映画の撮り方は女性ならではのもので、心を閉ざした女性とその性を深く優しく繊細に、そして時には露骨に大胆に残酷に描き出しています。女性の性を正面から描くため大胆なセックス描写が多く、最近の映画ではそこばかりが注目されてしまう不遇の監督でもあります。この「イン・ザ・カット」においても、恋愛コメディの女王メグ・ライアンの大胆ヌードなどと、とりざたされていました。しかしその宣伝文句はまったくまとはずれです。カンピオン監督は女性の裸を綺麗に見せようとはしません、あるがままに描くだけです。メグ・ライアンの裸目当てで借りた人はみんなさぞかしがっかりしたことでしょう。さて、そんなカンピオン監督がはじめてサスペンス映画にチャレンジしたのがこの「イン・ザ・カット」です。しかしおもしろいんです。まったくサスペンス映画になっていないんです。身近で起こる殺人はどこ吹く風で、メグ・ライアン演じる女性教師のフラニーの性に対する内面的葛藤とその開放に主題が置かれ、どこまでも深くエロスに満ちた映画になっています。男と女の関係から愛やロマンティックを省いて、肉体的欲求につながりを描く独特の姿勢に、気恥ずかしさを感じると同時に圧倒させられます。この映画に関していえば、メグ・ライアンの裸は美しくないことに意味があったのだと思います。性への欲求を抑えてきた堅い女性教師が、性の喜びに目覚める瞬間を描くのですから、美しくないほうがよりリアルで刺激的だと思うのですがどうでしょう。
映像的にも、冒頭部で映し出される美しく落ち葉舞い散るニューヨークの町並みと、劇中の安定しない精神をあわらす手ぶれする映像やエロスにあふれる直接的描写などが対照的でまた素晴らしいです。
観る人を凄く限定する映画だと思いますが、このレビューを読んでピンときた方はどうぞごらんになってください。好きになれる人は少ないと思いますが・・・。
サスペンス映画を家族で観ようとしてこの映画を借りると、トラウマ映画として家族史に残ること請け合いの地雷映画でもあります。ご利用は計画的に・・・。
ちなみに我が家の地雷映画NO.1は「メリーに首ったけ」です。なんで家族で観にいったのか今でも疑問です。みなさんの地雷映画はなんですか?