お金2.0(佐藤航陽) | 地球日記

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今は文明の転換点。スクラムを組んで変化を押し進めよう!

 

お金2.0(佐藤航陽)
若い経営者のレベルもここまで来たかと思わせる一冊。彼の中では、AI、通貨改革、ブロックチェーン、ベーシックインカム、シェアリングエコノミーは何の矛盾もなく統合され未来を照らしている。そのビジョンは壮大で意外性に満ちたものだ。曰く、「複数の経済システムは併存しうる」。自分の性質や信条に合う経済制度を選べる時代がもうすぐ来ることを、現実性を持った理想として語る。なるほど自律分散型を突き詰めれば、そうなるだろう。国民国家という枠組みに思想も生活も支配され、それを空気の如く当たり前に感じている者には及びもつかない考えである。よくよく考えれば、○○主義一色で世界を塗りつぶす必要性などないのである。自由主義経済は資本主義だけなのか、本当に資本主義が「自由」主義経済なのか、負債強制自由経済なだけではないのか、今一度考えてみる必要がある。

 

一つ注意すべき点は、著者の頭の中に、階級という視点が無いことだ。本書で提案される社会像を演繹的に繋げテクノロジーの発展に沿うていけば、誰もが幸せになるので自然に受け入れられるかのような楽観性に満ちている。既得権者との摩擦というものが、全く考慮に入っていない。それは、資本主義を人間の本性にとって自然な経済であると著者が誤認し、資本主義の延長線上に新しい経済を据えている所に由来している。このままでは彼は知らぬ間に脱線あるいは誘導されて、ネオグーグル、ネオアマゾン的陳腐なネット独占企業を作る手助けをしかねない。もしくはWinny事件やライブドア事件の顛末をなぞるか、である。佐藤氏のやろうとしていることは、企業経営というより社会運動に近い。ぜひ既存権力に頼る誘惑に負けることなく、多くの民衆の賛同と参加を得てハレーションを跳ね返し、自律分散型世界の追求を最後まで貫いてほしいと願う。