「ーー団長!!
火の手が上がっております!」
深い藍色に染まった夜空を
照らすかのように燃え上がる炎
辺境の村にぽつりぽつりと立ち並ぶ
家々を焼く炎が夜空を染めていく。
王国内で行われている奴隷密売の情報を得た王国近衛騎士団団長カイルは王国騎士団を率い、表向きは盗賊征伐の名目を掲げブリデンズ領内にある辺境の村をめざしていた。
本来ならば、盗賊征伐などの為に王国騎士団のトップを飾る近衛騎士団が向かうことはない。だが、名目は盗賊征伐であるが実質目的は奴隷密売の摘発となる重要任務の為、王国近衛騎士団団長カイル自らが王国騎士団を率いてブリデンズ領内の辺境の村に向かっているのだ。
目的の村に辿り着いたものの、長閑だったであろう村は方々から火の手があがり、そこかしこに死体が積み重ねられている酷い有様である。
死体から流れ出る血はまだ乾いておらず、赤く地面を染めていることから殺された後まだ幾ばくの間もないことをカイルは瞬時に見極める。
ならば、いまだ非道な振舞いが村内で行なわれている最中である筈。火の手が上がる前の家々には良からぬ輩が潜んでいる可能性が高い。
カイルは現状を理解するや否や、的確な指示を王国近衛騎士団の面々にとばした。
「火の手の上がる前の家々を調べ、怪しいものは直ちに捕縛せよ!怪我を負った村人は速やかに保護し救護班の元へ!」
「「「「「はっ!!」」」」」
王国内でも一番の精鋭である選ばれし近衛騎士団の面々が各々の役割を果たす為に村の中へと駆け出していく。
背を見送りながら前方へ視線を向けると、樹々の並ぶ暗い木立の前に、突如、深い藍色の夜空に煌めく星星が一斉に流れ込み、白い閃光が瞬いた。
白い閃光は徐々に中心へ収束していき眩い光の中からは、なんと乙女が現れ出たのだった。
光の輪の中に浮かびあがる姿があらわになると夜空よりも深い漆黒の艶やかな黒髪と真珠色の肌を纏う乙女の姿が明らかになっていく。
乙女の姿がはっきりとした形となるにつれ光の輪は徐々に小さくなり、宙から下へと沈み込んでいった。
ーーっ!!樹々の生い茂る木立の前には
良からぬ輩がおるやも知れぬ!!
騎士団の面々は村内を探索中だ。
ーー急ぎ参らねば!!
ハッと我にかえったカイルは秀麗な唇を噛むと厚いマントを翻し、しなやかな体を空に舞わせるかの如く駆け出していた。
その銀髪たなびく背を近衛騎士団第二十位長ロドルフォも素早く追っていく。
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