※当SSは本家ラブライブと設定が違う部分などがあるので、初めて見る人は以下を参考にしていただければと思います。
真テニスのお姫様 まとめ
・前回のテニライブ!
迎えた都大会準決勝。
音ノ木の対戦相手は武蔵野第二、通称ムサニ。
音ノ木のD2はにこと花陽。対するムサニのペアは今まで目立った実績のない井口&小笠原ペア。
油断する音ノ木だったが、早速井口の放つ高速サーブに度肝を抜かれる。
更にネットに詰める異常なまでの速さまで見せつけられる。
すると部長の興津は突然席を外し、相手の集中力を削ぐ作戦にでる。
そこに海未が興津に聞きたいことがあると話しかけに行く。
海未が聞きたかったのは、昨年の暴力事件と、今年のこの強さに関係する話だった。
Genius 27「ムサニの想い」
~回想~
これは昨年の春。
興津がまだ北海道にいた頃の話。
「うあっ…!」
ある1人の女性選手が突然目を抑えながらコートに倒れた。
「だ、大丈夫か!?」
それを見ていた他の部員たちは、急いでその選手に駆け寄る…。
興津「す、すまない…。大丈夫か…。」
その女を怪我させた人物こそ、北海道二翼と言われたうちの1人、興津由佳だった。
興津も傷つけてしまったことを申し訳なく思い、手を差し伸べようとするが…
パッシーン
興津「!?」
その女性選手が興津のことを引っ叩く。
「あんた…ふざけるな…!」
興津「す、すまない…。申し訳ないということはわかっている…。」
その選手は、将来を有望とされていた1年生(当時)選手だった。
その怪我は今後のテニス人生さえ左右するほどのものだった。
「おい!興津!どう責任とってくれるんだ!」
3年生(当時)の先輩が興津を強く叱る。
興津「わかってる。私は取り返しの付かないことをしてしまいました…。」
興津は「音速の貴婦人」と呼ばれるそのアグレッシブなプレーが災いし、有望な部員を1人失うかもしれないことになっていたのだ。
これに、興津の下した決断は…。
興津「私、テニス部を辞めます。」
「!?」
部員たちはその言葉に驚いた。
興津は北海道慶徳のエース。
失えば、大きな戦力低下に繋がる。
「ちょ、ちょっとそこまでしなくても…。さっきは言いすぎたけど…。」
興津「いえ。これは全部私の責任です。ここまでしないと、許されません。」
「あ、ちょ、ちょっと…!」
そう言い残し、興津はテニス部を退部した。
その後、一学期を持って興津は北海道慶徳を自主退学。
これは家族の都合であり、この事件は全く関係していない。
ちなみに、その当時の1年生選手は大事には至らず、現在でもテニスを続けている。
そして時は流れ、その年の9月…。
場所は都立武蔵野第二高校へと移る。
宮森「ええっ!そ、そんな…監督次の新人戦私たちを出すって言ってましたよね?」
声を荒げて監督に物申すのは、武蔵野第二高校1年(当時)の宮森あおいだった。
顧問「はぁ?そんなこと言った覚え無いぞ。新人戦は、引き続き2年生を出す。」
顧問はタバコを吸いながらそう答える。
絵麻「そ、そんな…。」
しずか「ここまでせっかく頑張ってきたのに…。」
安原絵麻、坂木しずか。ともに1年生選手。
この2人もまた、新人戦を心待ちにしていた。
それまでテニスに対して強い想いを持っていた3人につきつけられた残酷な現実だった。
するとそこに…
「失礼します!」
職員室に凛とした声が響く。
その女こそ、春まで北海道慶徳にいた興津だった。
興津はこの9月からこの武蔵野第二高校に編入してきていた。
興津「あなたがテニス部の顧問ですね。」
顧問「そうだが、何の用だ?」
興津「本日付で編入してきた2年B組、興津由佳です。テニス部に入部したく思い、入部届を持って参りました。」
そう言って、興津は顧問に入部届を提出した。
新たなテニス人生を、興津はこのムサニで始めようとしていた。
しかし、興津が目の当たりにした現状はそれはもう見てられぬものだった。
「おいおい1年、早く球拾ってこいよww」
そう言って2年生の先輩たちはわざとコート外に出るような球を打ち続けた。
宮森「あ、はい…ただいま…!」
宮森たちもこれに反抗することなく、急いでグラウンドまで行きボールを取ってくる。
武蔵野第二はここまで目立った実績はなかったが、年功序列が非常に激しく、先輩は完全に後輩をこき使っていた。
先輩「ほぅら、1年。さっさと球取ってきて。」
矢野「うぅ…。あんたら、これ以上やると…」
そう先輩に反抗するのはまた同じ1年の矢野エリカだった。
先輩「あ?あんた歯向かうの?」
矢野「うぅっ…。」
先輩「生意気な野郎め!今すぐ全員グラウンド走って来い…!」
こう、少しでも自分たちに歯向かえばすぐグラウンドを走らせる。
これがムサニの現状だった。
興津「ちょっと!走ってくるのはあんたらの方だ!」
するとこれを見た興津が物申す。
先輩「ああん?あんた興津だっけ?まだ入ってきたばっかなのに、あんたも随分と偉そうねw一緒に走って来れば?」
興津「別に、私は構わないけど。ただし条件がある。」
先輩「は?条件?」
興津「今すぐそこにいる全員、私と勝負しろ。それで勝てなかったら、こいつら含めグラウンド走ってくるのはなしよ。」
先輩「はぁ?あんたそれ本気?まあいいけどwじゃあ、かかってきなさいよ!」
そうして後輩たちをいじめる2年生部員全員と勝負した興津。
興津はものの見事に、その全員を完膚なきまでに叩きのめした。
先輩「ハァハァ…何なのよあいつ…。お、覚えてろよ!」
そう言って先輩たちはどこかへと去った。
絵麻「す、凄いあの人…。」
しずか「あ、あの…ありがとうございました!」
興津「いいや、礼には及ばん。」
そしてまた別の日。
部活が終わり、家に帰る途中。
興津はある光景を目にする。
興津「ん?」
興津が目を向けた先には、河川敷で練習をする1年生たちだった。
興津はすかさず、1年生たちの元へと向かい…
興津「ちょ、ちょっとお前ら!こんなところで何してるんだ?」
宮森「ハァハァ…興津さん…」
絵麻「私たち、練習しているんです…。」
興津「れ、練習…?」
なんと1年生たちは、毎日部活終了後にこの河川敷で練習をしていたのだ。
部活ではこきばかり使われ、碌に練習すらできない。
この話を聞いた興津は…
興津「お前ら。だったら私も一緒になって付き合うぞ。」
しずか「ええっ!?でも興津さん、いいんですか…?」
興津「私は構わん。それより、そんなんじゃ練習にもならんだろう。」
そうして、興津は毎日1年生たちの練習に付き合い続けた。
すると、ある日興津は1年生たちにこういった。
興津も、同級生ながらもその他の部員たちを許せなかったのだ。
対して実力もないくせに先輩風ばかり吹かせる2年生、テニスに対してひたむきな想いを持っているのにも関わらず練習すらまともにできない1年生。
だから興津は1年生たち側に付いたのだ。
興津「ねえ、あんたたち。私に勝てると思う人がいるならば前に出ろ。」
1年生「!?」
興津は背を向けながらそう言った。
1年生は一瞬、驚いたような表情を見せたが、当然ながら誰一人と前に出るものはいなかった。
興津「わかった。だったら、私に着いて来い!」
1年生たちと、興津の間に強い信頼関係が生まれた瞬間だった。
しかし、そんな毎日に終止符を打つ日が来るなんて、誰が想像しただろうか。
徐々に陽も短くなり始めた10月頃…。
先輩「おいおい、これ見てこれ見てwwこいつら生意気に部活の後に練習なんてしちゃってるのwww」
ある1人の部員が、河川敷で練習する興津たちを見つけてしまったのだ。
それを写メで取り、印刷したものを他の部員たちにばらまく。
先輩「うはwwなーにこいつら?しかも興津までww1年生は大人しく球拾いだけしてればいいのよww」
\ハーハッハッハッハッwwww/
矢野「うぅっ…あいつら…。」
手を出そうとする1年生たちだったが…。
興津「矢野。絶対に手を出すんじゃねえぞ。」
ここは興津が止めに入る。
するとそこに顧問もやってきて…。
顧問「よお、お前ら。練習、ちゃんとやってるか。」
先輩「あ、はい先生。それなんですけど、ちょっとこれ見てもらえませんか?」
そう言って顧問にもその写真を見せる。
顧問「はぁ?なにこれwwwこいつらこんなことしちゃってんの?」
先輩「そうみたいなんですぅ~。それで、なんか興津さんもなんか一緒になって練習してて…。」
顧問「はぁww何だよwwお前ら(先輩)が頑張って練習してるというのに、こんなことされたら馬鹿みたいなんですけどww」
顧問も碌に練習を見に来ることなんてなかった。
顧問の前ではいい顔ばかり見せる先輩たち。
顧問「実力のある先輩たちが毎日頑張って練習してんだから、お前らは一生球拾いでもしてろww実力もないくせに先輩を馬鹿にするようなことしてんじゃねえよwwww」
全くやる気のない顧問。
この瞬間、興津の堪忍袋の緒が切れた。
興津「あんた…それでも指導者か!」
宮森「ちょ、ちょっと!興津さん!」
そして興津はそのまま顧問に殴ってかかった。
するとそこに先輩たちも参戦。
そして最終的には1年生まで入り乱れ、乱闘騒ぎになった。
これにより、テニス部は全員停学処分。
同時に、テニス部はそのまま廃部となった。
これが昨年の暴力事件の真相である。
そして月日は流れ…
興津「みんな、私たちで新テニス部を作ろう。」
興津が、1年生たちを集め、新テニス部を結成しようと考えていた。
そして創部申請書にメンバーの名前を書き、生徒会に提出しようとしていた。
宮森「ねえ、興津さん。本当に大丈夫なんでしょうか…。」
興津「ダメなら、相手がいいって言うまで徹底的に頭を下げ続けるまでだ。」
絵麻「興津さん…。」
興津「いいか、お前ら。目指すは、全国だ。私に着いて来い…!」
海未「なるほど…これが昨年の暴力事件の全容ですか…。」
興津「ええ。もう一度聞くけど、本当に、外部には漏らさないって約束できるわよね?」
海未「はい、もちろんです。日本人たるもの、決して約束を破ったりなど致しません。」
興津「ふん。その様子ならば、信じて良さそうだな。」
そうして、興津と海未はそれぞれのベンチに戻った。
ことり「あ、海未ちゃんおかえり~。」
海未はどこか浮かない表情をしていた。
ことり「海未ちゃん、随分と遅かったけど、何かあったの?」
海未「ことり…。この試合、私たち勝てないかもしれません…。」
今回はここまで。
ムサニの過去話だけで1話を使ってしまいましたw
さあ、次の回から試合を再開したいと思います。
ムサニの試合はゆるゆりの時よりも少し長くなると思います。
でわでわ