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「難聴」とは
難聴とは「聴こえにくい状態」を指しますが、その原因によりいくつかの種類に分けられます。
主に 伝音性難聴 と 感音性難聴 があり、これらが両方関係して起こる場合は 混合性難聴 と呼ばれます。
伝音性難聴
伝音性難聴 は、外耳から中耳、そして蝸牛へ音を伝える過程に障害が生じ、音の振動が十分に蝸牛まで届かないことで起こる難聴です。
このタイプの難聴は、伝音機能が回復すれば聴力が元に戻る可能性が高く、また補聴器などで音を増幅することで、ほぼ正常に近い聞こえに改善することができます。
視覚に例えると、角膜から網膜にかけての光の伝わり方に問題が生じることによる視力障害に近い状態です。屈折異常や白内障などがこれに相当し、メガネやコンタクトレンズ、あるいは眼内レンズの手術により本来の視力に回復できるのと同じイメージです。
感音性難聴（最も多い）
感音性難聴（最も多いタイプ） は、
① 内耳（主に蝸牛）の障害によるもの と、
② 内耳より後ろの聴覚伝導路（蝸牛 → 脳幹 → 大脳皮質へ至る神経経路）の障害
いわゆる 後迷路性障害 に大きく分けられます。
後迷路性の難聴では、言語処理の機能にも影響が及ぶため、補聴器での改善は非常に困難です。また、発生頻度も多くはありません。
そのため、補聴器の主な適応となるのは内耳性の感音難聴 となります。
しかし感音性難聴では、伝音性難聴とは異なり、後述するように 補聴器装用の効果を妨げる３つの特徴的な問題 が存在します。
これが、伝音性難聴に比べて補聴器での改善が難しくなる大きな理由です。
内耳障害による感音性難聴の閾値の上昇だけではない
内耳の障害による 感音性難聴 は、単に聴こえの 閾値（聞こえる・聞こえないの境目） が上昇するだけではありません。
もちろん難聴である以上、まず最初に 閾値の上昇 が起こり、閾値より小さい音は聴こえなくなります。
しかし、感音性難聴ではそれに加えて、補聴器の効果を妨げる特徴的な問題が生じるのです。
ここでは、補聴器装用を困難にする 「3つの厄介者」 をご紹介します。
補聴器の装用を妨げる「3つの厄介者」
① 歪（ゆが）んで聴こえる —— 音のひずみ（歪成分の増加）
内耳（蝸牛）が障害されると、音を電気信号に変換する有毛細胞の働きが悪くなり、
入ってきた音がゆがんで脳へ伝わる ようになります。
補聴器は音を大きくする装置ですが、
ゆがんだ音をいくら大きくしても 明瞭度（言葉の聞き取りやすさ）は改善しません。
そのため、
「聞こえるけど、何を言っているか分からない」
という状態が起きやすくなります。
② 大きな音が急にうるさく感じる —— リクルートメント現象
内耳障害の感音性難聴に特有の現象で、
小さな音は聴こえないのに、大きな音になると一気に “異常にうるさく” 感じる という特徴があります。
補聴器で音を増幅すると、この現象が強く出るため、
- 補聴器をつけるとすぐにうるさい
- 音量が合わない
- 長時間つけていられない
といった問題が起きます。
補聴器調整が最も難しい原因の一つです。
③ 時間が経つとすぐ疲れる —— loudness growth（ラウドネスの急激な成長）
正常な耳では、
「音が大きくなるほど、段階的に“音の大きさの感じ方”が増えていく」
という仕組みがあります。
しかし内耳障害があると、
小さな音は感じにくいのに、
少し増幅しただけで急激に “大きい音として感じてしまう” ことがあります。
そのため補聴器を使うと、
- 音のバランスが崩れる
- 音の種類ごとの差が分かりにくい
- 音疲れが早く訪れる
という問題が生じます。
◆ まとめ
内耳性の感音性難聴では、単に音が小さく聞こえにくいだけでなく
- 音がゆがむ（明瞭度低下）
- 大きな音が急に不快になる（リクルートメント）
- 音の大きさの感じ方が急に増える（ラウドネス成長の異常）
という「3つの厄介者」が補聴器の調整を困難にしています。