「やまない雨はない」
雨が降り始めたとき必ず彼はつぶやいていた。
付き合い始めた頃は聞き返していたが、なんでもないと、はぐらかすのでいつの間にか疑問にも思わなくなっていた。
さっきまで晴れていた外は夕立が降り始めた。今も雨に彼は呟いてるに違いない。そう思うと顔が見たくなった。
さっきまで玄関に置いといた携帯がみつからない。最近、バッテリーの持ちが悪いとは思っていたが姿を隠すことまでも出来るとは思っていなかった。これはいつものようにオサムに探させるしかない。
「オサム。ブーブー持ってきて」
誰もいない部屋に私の声が響く。このマンションに住んでそろそろ一年。結婚をあきらめるのと同時に犬を飼いたいと思い姉と一緒に購入した。
しばらくすると鈴の音が近づいてきた。最近、お姉ちゃんが買ってきてつけたのだがオサムも気に入ってるらしく居る場所も分かりやすいのでそのままにしてある。姿が見える前に私の携帯が振るえてる音が聞こえた。それでも一生懸命にくわえている姿が可愛くて今回は隠していたことを怒るのをやめた。
メールの相手は崇からだった。
(近くで誘拐があったらしいけど瞳じゃないよな?)
なんのことだかよくわからなかったが、メールを返そうと打ち始めたらインターフォンが部屋に鳴り響く。