海外からの人気も高い日本酒。日本の財務省が発表した貿易統計によると、日本酒の輸出量はコロナウイルスの影響が出た2020年を除き、増加を続けています。
そんな日本酒は、温度によって味わいが変化する世界的にもとても珍しいお酒です。今回の記事では、日本を代表する日本酒の基本的な醸造方法についてご紹介します。
 

毎月8がつく日はお米の日

 
「お米の日」を制定した団体は複数考えられておりますが、8という数字とお米には密接な関係があります。いずれの団体も米の漢字を分解すると八十八になることを理由に8の付く日や、毎月8日、8月18日などをお米の日として制定しています。
 

日本酒造りができあがるまで

全国各地にある酒造では、その土地の持つ気候や独自の技術を用いて日本酒造りをおこなっていますが、日本酒の基本的な製造工程はどのような流れなのでしょうか。ここからは、日本酒造りの工程についてご紹介します。
 

精米

酒造りの工程は、米を磨くところから始まります。ここで磨かれる米は食用米ではなく、酒米(さかまい)と呼ばれる日本酒用の米を使うことが多いです。酒米についての詳しい記事はこちらからご覧いただけます。
米の外側には脂質やタンパク質を含む成分が含まれており、これらが雑味に繋がります。この雑味を無くすために米を磨きます。米をどれくらい削るかを示す「精米歩合」は、その米の品種や状態によって異なるため、米の品質を精査し、最適な精米に仕上げていきます。
 

洗米・浸漬

次に、精米した米を洗う「洗米」という作業を行います。これは米についた糠(ぬか)を取り除くためで、糠に含まれるアミノ酸は雑味の原因となるため、ここでしっかりと落とします。家庭で米を炊く際にも洗うように、日本酒造りにおいても洗米を行わなければ、おいしい日本酒は出来上がりません。
その後、米を水に浸して適切な量の水分を与える「浸漬(しんせき)」という作業を行います。米は同じ品種でも年によって育ち具合が異なり、取れる場所によっても個性が異なるため、米の様子を注意深く観察しながら適切な浸漬時間に調整します。
 

蒸米

浸漬した米の水をしっかり切り、米を蒸していきます。家庭では米を炊きますが、日本酒造りにおいては蒸します。米を炊くと水分を多く吸収するため、ふっくら柔らかく仕上がります。日本酒造りにおいては「外硬内軟(がいこうないなん)」という外側は程よく硬く、内側はやわらかい状態の米が理想だとされています。この状態を目指すために、米の状態を調べる「検蒸(けんじょう)」などを行ったり、五感で調べたりしながら均一に仕上げていきます。
蒸した米はこの後の工程用に冷ましていきます。
 

製麴(せいきく)

製麴とは、蒸した米を麹にすることを言います。ここで質の良い麹を造れるかどうかで、酒質が大きく左右されるため、特に重要な工程となります。そのことを象徴するように日本酒造りでは「一麹、二酛(もと)、三造り」という言葉があり、一に麹造り、二に酛造り、三にもろみの仕込みが重要であるということを意味しています。それほどまでに、麹造りは重要な作業といえるのです。
麹は、蒸米に麹菌(=カビ)を付着させ、菌を繁殖させることで出来上がります。このとき使用する蒸米の量は、前の工程で作った分のうち2割ほどです。麹には、米に含まれるデンプンを糖に変えるという重要な役割を担っており、この糖を後ほど登場する酵母が食べることでアルコールが発生し、お酒となります。
また、麹からはさまざまな成分が作り出されます。例えば、米に含まれるタンパク質を分解して、酒の旨味に繋げてくれる酵素や、先ほど触れた酵母を育てる栄養素など、麹は酒質に大きな影響を与える働きをします。このことから、質の高い麹を造ることは、質の高い酒造りに繋がる必要不可欠で重要な工程と言えます。
 

酛(酒母)造り

酛とは、アルコール発酵を促す「酵母」を大量に培養したもののことです。酵母を生み育て、アルコールを発生させる酛は、文字通り酒の母と言えます。
酛は、麹と水を混ぜ合わせたものに、酵母と蒸米と乳酸菌を加えて造りだされます。タンク内でこれらを混ぜ合わせ、日々温度管理をしながら約2週間〜1か月かけて酵母を培養していきます。酛も生き物なのでタンク一つひとつ個性を把握しながら元気な酵母を育てていきます。
また、酛造りの中で乳酸添加を行わず、空気中の乳酸菌を取り込む自然の力に頼った造り方を「生酛(きもと)造り」と言います。
 

もろみ仕込み

もろみとは、先ほど造った酒母に麹、蒸米、水を加えて発酵させた液体のことを言います。加えるときは全量を一気にではなく、3回に分けて加えていきます。これを「三段仕込み」と言います。もし一度に全量を入れてしまうと、酒母の酸度や酵母の密度が下がってしまい雑菌が繁殖してしまう恐れがあります。三段仕込みをすることで雑菌の繁殖を押さえつつ、発酵状態を安定させ、酵母の活性を保てるようになります。
発酵期間は約3週間から1か月となります。
ちなみにこのもろみ仕込みの過程において、麹が米のデンプンを糖に変える「糖化」と、その糖を酵母が食べることでアルコール分解を行う「発酵」が、ひとつのタンク内で並行して行われますが、これは世界でも非常に稀な製法で、日本酒の特徴をよく表しています。
 

上槽(じょうそう)

発酵が終わったら、もろみを搾って原酒と米、米麹などの固形分である酒粕に分離させる「上槽」という作業を行います。上槽をし、液体部分を取り出すことで我々が知る透き通った日本酒が完成していきます。搾り方には種類があり、どのように搾るかで味わいは大きく変化します。
最もポピュラーな搾り方ともいえる自働圧搾機を使用した搾り方、「槽搾り」と呼ばれる機械を使わない伝統的な搾り方、重力による自然の力に頼った「袋吊り」と呼ばれる搾り方などがあります。この袋吊りは別名「雫取り」や「雫しぼり」とも呼ばれ、最も手間がかかり、取れる量も少ないですが一切の圧力がかかっていない搾り方ゆえ、日本酒本来の味わいが楽しめる渾身のお酒となります。

「純米大吟醸 天の戸・白雲悠々〈雫〉」

 

濾過(ろか)・火入れ

搾ったお酒に残っている固形物を取り除くために濾過を行います。その後、殺菌や酵素の働きを止めるために火入れを行います。これにより、酒質の劣化を防ぎ、酒質を安定させた状態をキープすることができます。しかし、ここで火入れを行わないお酒もあり、これは「生酒」と呼ばれます。生酒は品質が変化しやすいものの、日本酒本来の瑞々しさやフレッシュさを楽しむことができます。現在では冷蔵技術や輸送環境が充実しているため、全国で楽しめるようになっています。
 

貯蔵・調合・割水

火入れをした後、一定期間熟成させる「貯蔵」を行うことでまろやかな味わいに変化していきます。貯蔵期間は大体半年から1年間で、長いものだと3年や5年ものあいだ熟成させるお酒もあります。
そして、貯蔵期間を経たお酒に加水をしてアルコール度数の調整を行ったり、各銘柄が目指すコンセプトに沿ったブレンドなどを行うなどの調合精製をし、最終工程の瓶詰へ移っていきます。

「初心 光蔵 淡熟三年 山廃仕込 純米大吟醸」

 

瓶詰

いよいよ日本酒の最終工程であるボトリングをします。この際、調合されたお酒に再度火入れを行い殺菌や酒質を安定させます。その後、問題ないかの検査を行い瓶詰めをして日本酒は完成します。
 

さいごに

いかがでしたでしょうか。日本酒には多くの工程があり、その一つひとつに造り手のこだわりと想いが加わっています。先に述べた通り日本酒の製法は世界的にみても非常に珍しく、火入れの有無や搾り方によっても味わいが異なる奥深いお酒です。日本酒造りの工程を理解したうえで日本酒を選ぶとより楽しみの幅が広がり、より日本酒の虜になるでしょう。ぜひ自分好みの1本を見つけてみてください。
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