11/25
動物病院へ連れて行く数日前、
猫は楽器を持つわたしのもとへかまわず寄ってきた。
いつもなら楽器を遠巻きに見て、
けっして近寄ったりしないのでよく覚えている。
ひざのなかでとろけるように丸くなっていた。
すごく甘えてくることがあった。
帰宅時のお出迎えも、玄関からダイニングになった。
そういう行動の変化があった。
「今日も会えてうれしい」
「ありがとう」
「いい子だね」
「大好き」
「愛してるよ」
「アイラブユー」と毎日口に出していた。
病気を持って、猫はつらかっただろうか、
しんどかっただろうか。
いろいろ思うことはあるが、
わたしなりの愛を常に猫には伝えていたのだから
こうなってしまったことへの悔いはない。
11/26
夜中、ときどき足ケリケリ。
のどを「ぐうー」と鳴らしゲフゲフ。
それが長く続き、
あるとき「ゲフッ!!」
それから静寂。
人間は8時起床。
「猫に休みなし」
猫は苦しそうにみえる。
前足を伸ばし、前方へずりずり、「ゲフッ!!」
そのくりかえし。
それを近くでずっと見ていられるのは幸運。
職場のみんなに感謝しかない。
一人暮らしだから
きっとこういうことが許されたのかもしれない。
この家が猫の最後の場所となるかもしれない。
かなしいがうれしい。
この家が好きだ。
今日はそれぞれの部屋をめぐって感謝を伝えた。
朝、歯磨きしてから座禅をくんでみる。
窓を開けて風の音を聞いてみた。
猫の舌に変化があった。
先っぽがすこし見えるくらいにまで、
口のなかにおさまっている。
どうしてそうなったのかはもちろんわからない。
猫はときおり顔をあげて、
なにかを振り切ろうとしている。
9時頃しっこをチェック。
シート3枚が濡れていた。
夜中にしていたのかもしれない。
しっこチェックは時間問わずしたほうがいい。
「昨日〇時に出たからそろそろか」
という予想はあまりあてにならない。
猫の足をふいてやる、
この時間が好きだ。
おむつは仕事復帰してから使おうかと考えたり。
そのあいだも喉を苦しそうに鳴らす猫に、
わたしは何もしてやれない。
いや、できることはある。
気を付けてみてあげること。
そばにいてできることを考えること。
心地よく過ごせるよう、
布団やシーツやタオルを整えること。
口元をきれいにふいてやること。
「みてるよ」
「ありがとう」
「えらいね」
「すごいね」
「がんばってるね」
と声をかけること。
毛をやさしくなでてやること。
身体が布団からずれたらなおしてやること。
ごはんの量を見極めること。
一日中、家にいて自分の身体がなまるんじゃ……
と思っていたが全然。
階段を何十往復しおなかすっきり、
規則正しい食事をとり、
毎日の洗髪も(清潔にすると気持ちいいのだ)。
クリニックへ行って外界とつながり、
家族や友人が来るので家を掃除する。
介護って案外、一人きりじゃないのだ。