どん。どん。どん・・・・
重い重い無機質な音が、木製の古いテーブルから、直に体の芯まで、響き渡る。
先ほどまで、どんな花が咲き乱れるのかとセンチな気分でいたヤサ心に、冷や水をぶっかけられた
ようだ。
花というより、ただのすり鉢そのものだ。
しかも5個同時に頼まれる様に想定されてないため、隣りどうしのすり鉢と、くっつきあってしまっている。
近い。隣との距離が近すぎる。
あまりの大きさに、スペシャルを食いたいと、息巻いていた男たちから、笑顔と言葉を失った。
食べ物で遊ぶのはやめたほうがいい。
身を持って知った瞬間だった。
あきらかに、最後の大盛りが不要だった。
あれがなければ、もっと余裕をもって、3000円/杯として受け入れられたかもしれない。
〈見た目だけで腹いっぱいになるわ〉
〈おれもそう思ってた〉
おいおい。今、食べ物で遊ばないって決めたとこだろう?
頼んでしまった以上、おいしく食べるのが、店にも、ラーメンに対する礼儀だろう。
それと、お金をだしている私にも。
箸が進まない彼らをよそに、私が、先手を取って、誘導するしかない。
彼らは本日集まったのが、私の失態を励ますということをすっかり忘れてしまっている。
いつの間にか、このスペシャル(大盛り)をいかに制覇するかになってしまっている。
おかしい。
楽しいはずの、宴が、罰ゲームのようになってしまっている。
お願いだから、笑ってくれ。
お前たちが、夢にまで見た、スペシャルが、一人に一杯ずつあるんだぞ?
なんで、顔が生き生きしてないんだ?
この際、話のネタにするために、SNS用の写真でも、とってくれれば、まだ、場が和むのに・・・
笑え。笑ってくれ・・・
さっきまで、どんぞこにいた私が、なぜにここまで、彼らの笑顔を、求めなければならないのか?
理解に苦しむ。
おとなしく、好きなラーメンを食べれば、年相応の、溢れんばかりの、元気な笑顔を見せてくれたんでは
なかろうか。
ほら、店主の親父も、食べてくれないで心配してるんだろう?
とふと、顔を向けると、
先ほどまで、読みふけっていた、スポーツ新聞に夢中になっている。
何をそこまでこの親父を引き付けるのか?
まぁそれは、良しとして、店主・彼ら4人+私のうちで、もっともこのスペシャルに興味を
もっているのは、私であることは間違いない。