もう、帰ろう。
だれもか、そう思っていたのが間違いない。

すでに、完食という頂上にはだれも、興味を示さなくなっていた。

この店は、食券制じゃ無いため、店から帰るには、店主に直にお金を支払わなければならない。

空いていれば、すぐにでも、お金を払って出たいとこだが、女子ふたりが呼び水になったのか、深夜にも関わらず、店内は満席になっていた。

本来なら、作る人以外にもう一人くらいいるのだろうが、いまは、深夜時間。

お客も、少なくなると思い、店員は店主一人のみ。

いま、調理の真っ最中で、とても、声をかけても、聞いてくれることは、ないだろう。

もう、一滴たりとも、食べ物が入らない、腹パンパンのわたし達は、目の前に置かれている、すり鉢の中身は、食べ物と認識していない。
頭にあるのは、一秒でも早く、店からでることしかない。

わたしたちが、静かにそのときが訪れるのをまつ、かたわら店の賑わいは、ピークに達していた。

人は時に、非情になる。

あれ?あれって、スペシャルじゃね?

店の常連と覚えし、若い男性が、私たちの無惨にも、食い散らかした、残骸を発見したらしい。

[おじさーん!これって、ただのスペシャルじゃないよね?ドンブリちがうもの]

[それは、スペシャル大盛りだよ!]

店主は、愛想よく応える。

おいおい、ずいぶん余裕ありそうじゃんか。そんなやりとりいいから、はやく、会計してくれ。

私たちは、五つのこうべをたれたまま。目線だけおくって、店主を睨み付けた。

[大盛りになると、こんなドンブリになるんだ~!すごいな~はじめてみたよ!しかも、五つ!ふつうのスペシャルでも、食べきれないのに、大盛りは無謀しょ!]

その常連が、私たちに言ったのか、自分自身にいった独り言なのか、わからなかったが、それをきいた店内は、まるで、旧知の仲のように、いっせいにわらっている。
店主も例外にもれず、わらっている。

おまえは、とりあえず、笑ってんなら、会計しろ!

しらずしらずに私たちの、心の声の語気が荒くなる。

たえきれずに、私たちの右端の彼が立ち上がろうとした。

わたしは、すかさず、首を横にふり、
アイコンタクトで、椅子に座り直すように促した。