「フェアウェル さらば哀しみのスパイ」(2009・仏)

監督 クリスチャン・カリオン

出演
エミール・クストリッツァ
ギョーム・カネ
アレクサンドラ・マリア・ララ
インゲボルガ・ダプコウナイテ

1981年のモスクワ。セルゲイ・グリゴリエフ大佐はKGBの幹部で、家族と共に裕福な暮らしを送っていた。だがそんな彼は祖国が衰退の一途を辿 り、西側諸国に引き離されていることに危機感を持っていた。そこで彼は、フランス人家電メーカー技師のピエールを通じてフランスのスパイに接触を図り、情 報を流して現体制打破を目指す。

フェアウェル さらば哀しみのスパイwiki




静かに、冷たい空気感が伝わってくる。
これはスパイ映画だが、派手なアクションも爆破シーンも皆無だ。
人間ドラマとしてのスパイ物。時代に生きた男の葛藤だ。

実際のスパイ工作、というと本当はこんなものなのかも知れない。
地味で、大胆で、命がけ。
では彼は何故、情報を流したのか。

大いなる思いがそこに


そこには愛が、愛がある。
新しく迎えるよりよき世界に生きる、息子の姿を夢想している。
そして彼は、「もうひとりの息子」ピエールに、本当の息子には言えない・伝えることができない思いの丈を託していく。
彼よ、君よ、生きろ。私はその支えとなろう、壁となろう。
おお、私が生きる糧となってくれた息子よ。どうかこの「先」を生きてくれ。

それはまさに作中に登場するアルフレッド・ド・ヴィニーの詩、「狼の死」の父親の姿だった。

地味にウィレム・デフォーも出演


誰にでも受け入れられる映画ではない。よってお勧めはしない。6点。