「ダークナイト」(2008・米英)

監督 クリストファー・ノーラン

ブルース・ウェイン/バットマン クリスチャン・ベール
ジョーカー ヒース・レジャー
ハービー・デント/トゥーフェイス アーロン・エッカート
レイチェル・ドーズ マギー・ギレンホール
アルフレッド・ペニーワース マイケル・ケイン
“ジム”ジェームズ・ゴードン ゲイリー・オールドマン
ルーシャス・フォックス モーガン・フリーマン

正義感あふれる地方検事・デントと共にマフィアの撲滅に努めるバットマンの前に、狂気に満ちた犯罪を繰り返す不気味な男“ジョーカー”が現れる。

ダークナイトwiki




やっと、やっとダークナイトを観ました。
重厚感、メッセージ性、キャスト、ストーリー、どれを取っても素晴らしいのひと言でした。

今回の小道具もいちいち格好いい


何は無くとも、ジョーカーでした。ヒース・レジャー。
アカデミー助演男優賞を手にしたのは納得の演技、その存在感は遥かに主役であるバットマンおよびクリスチャン・ベールを凌いでいました。そもそもがこのクリスチャン・ベールの過去の作品への取り組み方を見るに、その全てに異様なまでのこだわりを感じてたんですが、その彼がおそらく今回も並々ならぬ役作りで挑んだにも関わらず、それすら脇に追いやってしまうかのような演技、そうまさに怪演でした。

観るものを惹きつけて決して離さない


ご存知のようにヒースは公開を待たずして薬物中毒で逝去したわけですが(2008年1月22日、28歳の若さにて没)、今後彼のジョーカーを見ることが出来ないと思うと本当に残念でなりません。

ちなみにこちらはフィギア。なんというクオリティ


他のキャストも触れておきましょうか。
まずはアーロン・エッカート。ペイチェックの時のような単純な悪役ではなく、本当にいい役でしたね。特に後半の存在感は流石。

マギー・ギレンホールについては若干の疑問。ケイティ・ホームズからの変更ですが、前作も含めてどうもヒロインが弱い気がして。切ないサブストーリーがあっただけにちょっと残念かな。

マイケル・ケインとモーガン・フリーマンについては相変わらずの安定感。今回の話の中に特筆するようなことは無いんですが、彼らが脇を固めている意味はしっかりあるといった印象。

ゲイリー・オールドマンは前作よりずっと責任感も出て格好よくなってましたね。今回は重要な役回りも含め露出も多め。いい意味でも悪い意味でも、彼の生死はそのまま、強烈なメッセージ性を含むようになってしまいました。

ストーリー、メッセージ性についてもネタバレしない程度に触れておかなくては。

何しろよく出来ています。911以降、それを暗にテーマにした作品は多々観ましたが、これもその一つと言えるでしょう。自分の信念のもとに、信じる正義をひたすらに遂行するバットマン、お前が俺を生んだんだと言わんばかりにルールに拘らずただ純粋に目的を自由に求めるジョーカー、これはまさにアメリカとテロとの戦いです。

さらに腐敗した警察は国家であったり、軍事産業であったり、例えばその軍事産業に支えられている政治家だったり、そのテロを支援するものが確実に存在するということをあらわしていて、ゴッサムシティの住人はセンセーショナルな事件によってころころと意見を変え、まるで信念を持たないかのように、アメリカ市民、世界市民を痛烈に表現していると言えるでしょう。

強烈な光が、漆黒の闇を作る。本来は純粋な光の騎士であったはずの正義の使者が、いつしかダークナイトへと変貌していくさまは、今後のアメリカ、そして世界の縮図を表しているといっても過言ではないかもしれません。

それだけに、本当にそれでいいのかという懸念はつきまといます。信じた正義のための犠牲は、本当に支払うべき代価なのか。はたして正義とはいくつの命と釣り合うのか。ややもすると今後も含めアメリカの払う犠牲への言い訳ともとれるメッセージ性には、多大なる危険が含まれていると言わざるを得ません。

と、小難しい言い回しはさておき、純粋に映画としてのクオリティがとにかく高いです。前作のビギンズも本当に素晴らしかったけれど、ダークナイトもまた後世に語り継がれるべき作品と言えると思います。観終わってすぐに、また観なくてはと思いました。こんな映画はそうありません。

WHY SO SERIOUS?


点数は9.5点。
10点でない理由は、本当に危険なものを手にしてしまった時の僕個人の保守的な防衛本能からのマイナス0.5点です。

ただのアメコミ物と思うべからず。超絶お勧めです。是非前作のビギンズからどうぞ。